「夜の京都いいね!」で観光公害回避 訪日客分散化へ、静かなたたずまいPR

観光客の分散化を促す動画の一場面。夜の観光の魅力を強調する

 京都を訪れるインバウンド(訪日客)に「分散化」を促し、混雑解消につなげるCM動画を京都産業大の学生らが制作した。市民生活との間にあつれきを生む「観光公害」を避けるため、早朝や夜の静かなたたずまいの魅力や海外で知られていない観光地をアピールする。

 新型コロナウイルスの水際対策が緩和され、訪日客回復が顕著になっているのを受け、京都文化交流コンベンションビューロー(京都市下京区)がCM制作を依頼。持続可能なインバウンド観光の実現をテーマに、経営学部の有志約60人が計9チームに分かれ、それぞれ2分程度の動画を作った。

 チームの一つは、報道番組を模した構成で「朝観光」の紹介を企画。6月中旬、学生7人が清水寺周辺(東山区)で、日中の混雑と早朝の人通りの少なさをリポートする動画を撮影し、訪日客が「人も少なく快適」と語るインタビューも挿入した。

 メンバーの2年横尾優稀さん(19)は、JR京都駅を出発したバスがスーツケースを持った外国人で混雑し、住民が乗車をあきらめる場面に出くわしたという。「中国本土からの団体渡航も解禁されれば訪日客はさらに増える。分散化は欠かせず、朝観光の魅力が伝わってほしい」と語った。

 分散化を促すための着眼点はチームごとにさまざま。動画では、バスの混雑緩和に向けて自転車での移動を勧めたり、夜景の美しさを強調して夜の観光を促したりしているほか、京都の都市部近郊で自然を楽しめる右京区京北や南丹市美山町の見どころも紹介している。

 京都市の訪日客の1カ月当たりの延べホテル宿泊数は、昨年6月はコロナ禍前の98.3%減で4961泊と低迷が続いていたが、今年6月は22.4%減の19万4909泊にまで回復(市観光協会まとめ)。今月には世界で著名な米旅行誌「トラベル・アンド・レジャー」の読者投票で同市が世界3位に選出されたと発表され、ますます訪日客の増加が見込まれる。

 CM動画について、京都文化交流コンベンションビューローは「学生たちの工夫で発信力の高いものができた」と評価。国際観光プロモーション事業などさまざまな海外発信を手がける中で「何らかの形で活用したい」としている。

© 株式会社京都新聞社