勝田貴元が3位表彰台獲得。優勝はエバンス、トヨタの“ホーム”で今季2勝目/WRCフィンランド

 8月6日(日)、WRC世界ラリー選手権第9戦『ラリー・フィンランド』の競技最終日が、今大会のサービスパークが置かれているユバスキュラの南西エリアで行われ、金曜日のデイ2から総合首位を守ったTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)のエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が優勝。第4戦クロアチア以来となる2023年シーズン2勝目をマークした。同チームからワークス参戦した日本人ラリードライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)も総合3位に入り、今季初の表彰台を獲得している。

 フィンランドのユバスキュラを拠点に8月3日(木)から6日(日)にかけて開催されたラリー・フィンランド。ユバスキュラ郊外にファクトリーを構えるTGR-WRTにとって、この高速グラベル(未舗装路)ラリーはチームの“ホームラリー”だ。そんな今大会は不安定な天候にも影響され、競技2日目のデイ2は実力者たちが相次いで戦列を離れる波乱の展開に。

 脱落者の中には前年大会の覇者であるオット・タナク(フォード・プーマ・ラリー1)、2017年大会ウイナーのエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 Nラリー1)、そして現シリーズチャンピオンにしてドライバーズランキング首位につけているカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)らが含まれた。

大破したカッレ・ロバンペラのマシン(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第9戦ラリー・フィンランド

 エバンスは、地元ユバスキュラ出身のチームメイトとトップを争っていたが、ロバンペラがSS8で激しくクラッシュし、リタイアとなった直後にラリーリーダーへと躍り出る。この金曜の午後には総合2番手に順位を上げてきたティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)に迫られるも、翌日のデイ3では計8本のSS中、7つのSSでベストタイムを並べる力走でギャップを拡大。最終日を前にその差を32.1秒とした。

“モクシ-サーロイネン”と“ヒモス-ヤムサ”というふたつのステージを2回ずつ走行する最終日デイ4もエバンスは手綱を緩めず、オープニングのSS19で今大会8回目のステージウインを記録。直後のSS20ではヒョンデの“エース”にギャップを3秒弱詰められたが、SS21でふたたびベストタイムをマークしタイム差を38.2秒に拡げる。

 英国はウェールズ出身のドライバーは、大量の“貯金”を持って迎えた最終SS22においてもヌービルが記録した暫定トップタイムを0.9秒上回ってみせ、パワーステージ最速ドライバーに与えられるボーナスの5ポイントを加えた“フルポイントマーク”を達成。この結果2023年シーズン2勝目、2021年以来2度目のラリー・フィンランド優勝を果たし、豊田章男チーム代表代行を表彰台の頂点に招待している。

 また、ドライバー選手権ではノーポイントに終わった現王者との差を55ポイントから25ポイントに縮めることに成功。トップと39.1秒差の総合2位でフィニッシュした選手権3位のヌービルも、同じく36ポイント差に迫っている。

2位となったティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組(ヒョンデi20 Nラリー1) 2023年WRC第9戦ラリー・フィンランド
デイ3から再出走を果たし、ラリーを完走したピエール-ルイ・ルーベ(フォード・プーマ・ラリー1) 2023年WRC第9戦ラリー・フィンランド

■最終日デイ4も勝田vsスニネンの3番手争いが白熱

 表彰台を懸けた争いは、抜きつ抜かれつの展開となった前日のデイ3に引き続き、ラリー最終日も僅差で推移した。

 競技3日目の最終ステージとなったSS18でステージベストをマークし、テーム・スニネン(ヒョンデi20 Nラリー1)を逆転して総合3番手に再浮上した勝田。ユバスキュラを拠点とすることから、このラリーを“第2のホームイベント”に位置づける日本人ドライバーは、6.4秒のリードを持ってデイ4に入り今朝のオープニングはステージ3番手タイムを記録した。

 しかし、ライバルがこれを上回る2番手タイムを記録したため両者のギャップは4.5秒に縮まる。続くSS20は勝田が今大会3度目となるステージウインを飾り、その差は7.2秒に。最終ステージを前にしたSS21では、スニネンがステージ3番手、勝田はコンマ9秒おくれて同4番手となったためタイム差は6.3秒に縮小した。

 迎えた最終パワーステージは、先に出走したスニネンが暫定トップタイムとなる4分56秒4を記録。対する勝田はライバルに対して2秒後れを取ったものの総合3位を死守。第2の地元であり、チームのホームで今季初そしてWRCの欧州ラウンドで初めてとなるポディウムフィニッシュを決めた。勝田の表彰台は2022年最終戦ラリージャパン以来9戦ぶりだ。

 勝田と4位スニネンによる白熱した表彰台争いの後方では、3年ぶりのWRC復帰を果たしたTGR-WRTのボス、ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)がスポット参戦で総合5位フィニッシュを果たした。総合6位はWRC2選手権にノミネートしないかたちでの出場となったオリバー・ソルベルグ(シュコダ・ファビアRSラリー2)だ。

 総合7位はWRC2クラスを制したサミ・パヤリ(シュコダ・ファビアRSラリー2)。33.8秒遅れたクラス2位/総合8位にアドリアン・フルモー(フォード・プーマ・ラリー1)が入り、ニコライ・グリアジン(シュコダ・ファビアRSラリー2)が総合9位でクラス3位表彰台を獲得している。

 WRCの次戦第10戦は伝統のギリシャ・ラウンド、9月7日(木)から10日(日)にかけて開催される“神々のラリー”ことアクロポリス・ラリー・ギリシャだ。

3位表彰台を獲得した勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第9戦ラリー・フィンランド
勝田貴元と表彰台争いを繰り広げ4位となったテーム・スニネン(フォード・プーマ・ラリー1) 2023年WRC第9戦ラリー・フィンランド
2019年以来の母国戦『ラリー・フィンランド』で、スポット参戦ながら総合5位となったヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第9戦ラリー・フィンランド
WRC2クラスを制したサミ・パヤリ(シュコダ・ファビアRSラリー2) 2023年WRC第9戦ラリー・フィンランド

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