交通系ICカード導入へ…鉄道、バス、タクシー乗り継ぎカード1枚に

【グラフィックレコード】交通系ICカード導入へ
来春の北陸新幹線県内延伸に合わせ、交通系ICカードが導入される京福バス=福井県福井市日之出5丁目

 7月上旬の週末のJR福井駅西口。福井市の一乗谷朝倉氏遺跡に向かうバスの到着を待っていた東京都の男性(61)は普段使っている「Suica(スイカ)」を手に「前もって結構チャージしてきたんだけど…。(福井では)まだ使えないんだね」と少し驚いた表情を見せた。

 京福バスによると、関東などからの旅行客からは「ICカードは使えないか」といった問い合わせが寄せられているという。経営管理部の池田健二係長は「降車時に両替や小銭を出すのに時間のかかる利用者もいた」と語る。

 来春の北陸新幹線県内延伸に合わせ、京福バスと福鉄バスは県内路線バスの全車両に交通系ICカードを導入する。「Suica」「ICOCA(イコカ)」「PASMO(パスモ)」といった10種類のカードでの運賃支払いが可能に。普及率8割とされる首都圏からの観光客らは、福井の交通機関をストレスなく利用できるようになる。

■  ■  ■

 県が2016年に定めた高速交通開通アクション・プログラムは、新幹線延伸に合わせ「ICカードを全県域で利用できるよう順次導入」と明記した。とはいえ、事業者には巨額の初期投資、ランニングコストが導入のネックとなっていたが、県が昨年、バスに搭載するカード読み取り機の購入費用の全額助成を決め、京福122台、福鉄34台に搭載することになった。

 石川では昨年10月から金沢市街地を走る北陸鉄道の「城下まち金沢周遊バス」で全国交通系ICカードの利用が始まったが、その他の路線は未対応。富山では21年10月から富山地方鉄道の路面電車で交通系ICカードが使えるようになったが路線バスでは使えない。

 県交通まちづくり課の廣瀬貴之課長は「ほぼ県内一円で交通系ICカードが利用できるという点で福井は先進的」と強調。乗降データを把握できるため、利用者が多い時間帯を増便するなど運行管理にも役立つとしている。

■  ■  ■

 えちぜん鉄道、福井鉄道も交通系ICカードの導入へ準備を進めている。路線バス同様に県が車載機の整備費を負担する。来春の新幹線延伸には間に合わないが、25年春の導入を見込む。県地域鉄道課の坂下正人課長は「24年秋に開催されるデスティネーション・キャンペーンもにらみ、できるだけ前倒しで導入できるようにしたい」と語る。

 JR西日本から北陸線を引き継ぐハピラインふくいもICカードに対応。タクシーに関しても県が予算措置し、ICカード導入を後押しする。鉄道、バス、タクシーがカード1枚で乗り継げる地域交通網の実現が近づく。

 交通政策に詳しいNPO法人「ふくい路面電車とまちづくりの会」(ROBA)事務局長の清水省吾さん(63)は「運賃の支払い方法が分かりにくく、面倒ということで公共交通を敬遠している人も少なからずいる。広く普及する交通系ICカードの導入で県民にとっても公共交通利用のハードルが下がっていくのではないか」と期待している。

⇒記者のつぶやき「クルマ依存解消の切り札に」

  ×  ×  ×

 来年春の北陸新幹線県内開業を契機とした新時代の福井のあり方を探る長期連載「シンフクイケン」は第4章に入ります。テーマは「駅を降りてから」。県外客に観光地などへどう足を運んでもらうか、2次交通を含めた取り組みと課題を探ります。連載へのご意見やご感想を「ふくい特報班」LINEにお寄せください。

シンフクイケン連載シリーズ一覧

【第1章】福井の立ち位置…県外出身者らの目から福井の強み、弱みを考察

【第2章】変わるかも福井…新幹線開業が福井に及ぼす影響に迫る

【第3章】新幹線が来たまち…福井県外の駅周辺のまちづくりなどをリポート

© 株式会社福井新聞社