暑くなる春秋、薄れる季節感 100年で激変 西日本で顕著、日本の四季に深刻な影響

地球温暖化の影響で開花が早まっている=3月27日、神戸市須磨区(斎藤雅志)

 地球温暖化やヒートアイランド現象などを背景に、春と秋の平均気温が上昇し、季節の変化を感じにくくなっている。西日本で顕著で、気象庁が調べた主な都市の平均気温は、春(3~5月)は100年あたり2.4~3.5度、秋(9~11月)は同2.5~3.8度の上昇が見られた。気候変動が、日本の四季に深刻な影響をもたらしている。

 平均気温の上昇幅は大阪が春=同2.8度、秋=同3.0度、福岡は春=同3.5度、秋=同3.8度-など。ただ、都市化によるヒートアイランド現象の影響は冬に強く出るため、冬も同1.7~3.0度上がっている。

 神戸地方気象台によると、姫路で春、秋ともに同3.0度上昇。特に3月の最高気温の平均で同5.2度、10月の最低気温で同3.8度上がっていた。今年3月下旬には、最高気温24.6度を記録し、3月の観測史上最高となった。

 同気象台は「3月から急に暑くなったり、12月に一気に寒くなったりと、季節が極端に変わるような傾向が見られる」と指摘する。

 一方、神戸は春が同1.8度、秋が同1.4度と、西日本の都市部の傾向は見られなかった。観測所が、気温の上がりにくい海沿いに移転した影響などが考えられるという。

 春や秋の気温上昇は、植物や農業などに影響を及ぼしている。神戸では、桜の開花が50年で5日早まっており、同気象台は「近年の温暖化の影響が顕著に表れている」と指摘。全国的には、秋の深まりが遅れ、カエデの紅葉時期も遅れているという。また、3月の急な気温上昇により、茶葉の生産地では、寒の戻りによる冷害リスクが高まるなどの影響が出ている。

 気候変動対策として、世界は産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えることを目指す。温暖化による気温上昇について、日本では都市化の影響が比較的小さいとみられる全国15地点で計測しており、100年あたり1.3度の上昇となっている。

 四季の変化を脅かす、春と秋の気温上昇。一方、猛暑日や熱帯夜が増加している夏はもはや、人々の暮らしにとって危険な季節となった。(石沢菜々子)

### ■災害級の暑さ、暮らし脅かす

 近年の猛暑で熱中症リスクが高まる中、兵庫でも夏の恒例イベントが、実施方法の見直しや対策強化を迫られている。

 7月、コロナ禍を経て4年ぶりの通常開催となった兵庫県佐用町の「南光ひまわり祭り」。ドーム状の屋内運動場に、名物の「ホルモン焼きうどん」やシカ肉のコロッケをはじめ、かき氷やたこ焼きなどの屋台が並んだ。

 県内外約5万人の観光客が訪れる同祭りは、町内で約85万本が段階的に開花する7月中下旬に開催。屋台は従来、近くの駐車場に出店していたが、近年の暑さで熱中症になる人もおり、今年から屋内に移した。

 親子連れでにぎわう会場で、シカ肉のハンバーガーを販売していた小林ひとみさん(69)は「以前はコンクリートの照り返しもあってきつかった。屋根があると全然違う」と話した。

 三田市の「三田まつり」も5年前、ステージイベントを屋外から屋内へ変更。三木市の「みっきぃ夏まつり」では、「少しでも暑い時間帯を避けたい」(市担当者)と今年、屋外ステージイベントを30分繰り下げた。西脇市の「日本のへそ西脇夏まつり」では警備の課題もあり、開催日を2日から1日に短縮。日中のダンスコンテストを取りやめ、夕方のステージで一部披露してもらう形にした。

     ◇

 春や秋に比べると上昇率は低いものの、「災害級」とされる近年の夏。今年は県内各地で7月の観測史上最高気温が記録された。

 神戸地方気象台によると、姫路の猛暑日は、1980年代は5日以下だったが、2010年以降は10日を超える年が続出。豊岡も10年以降、20日を超える年が増えた。神戸も増加傾向で、20年に13日を数えた。

 一方、熱帯夜(最低気温が25度以上の日)は、神戸が22年に65日と観測史上最多を記録。姫路や豊岡も00年以降の増加が目立つ。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の気温上昇シナリオを踏まえ、同気象台は「21世紀末までに兵庫では、20世紀末と比べ猛暑日が6~34日、熱帯夜は16~60日程度増える可能性がある」とする。

     ◇

 日中の屋外作業が避けられない建設現場は、熱中症予防に細心の注意を払う。

 7月下旬の午後2時ごろ。中堅ゼネコンのノバック(姫路市)が請け負う神戸市中央区のマンション建設現場で、作業員が仕事の合間を縫って飲み物を手に、日陰で涼を取っていた。

 この日の神戸の最高気温は34度。だが、強い日差しに現場の温度計は42度を示し、熱中症警戒レベルは最高位の「危険」だった。

 厚生労働省によると、熱中症による勤務中の死傷者数は、業種別では建設業が最多だ。同社では、昼休みと午前、午後の定時休憩以外にも、日中は作業員同士が様子を見て随時休みを取る。「昼間は2時間も働いたらふらふらになる」と前田泰志所長(61)は話す。

 騒音や振動を伴う作業は、近隣と約束した時間を守る必要があり、早朝や夜に動かせない。「夏場の作業効率が落ちるのはやむを得ない。健康に気を使いながらやるしかない」と前田所長。脳や臓器の深部体温を測定し、熱中症の前兆を知らせる腕時計型機器の配備も検討する。(石沢菜々子、横田良平、杉山雅崇)

### ■兵庫県内の熱中症搬送、10年で2.8万人

 熱中症は気温や湿度などの環境のほか、肥満や二日酔い、睡眠不足といった体調、激しい運動や屋外作業に起因する。発汗による体温調節ができなくなると、体内に熱がたまって発症する。めまいや立ちくらみ、顔のほてりや筋肉のけいれんが初期サインという。

 総務省消防庁によると、兵庫県内の熱中症による救急搬送者数は、2013~22年の10年間で計2万8444人。今年も5月1日~7月23日で1381人が搬送されている。

 65歳以上が過半数に上る。17年から統計が始まった場所別では、「住居」が40%を占めた。エアコンなどを使わなかった夜間や、庭先で作業中に発症するケースがあった。キッチンで火を使った調理中も、熱と蒸気が発生するため注意が必要という。

 歩いて移動中や、商業施設などで発症することも。同庁は「特に体温調節機能の弱い高齢者や子どもは警戒を。体調が優れないときは外出を控えて」と呼びかける。

 これからの時期では、お盆休み明けが要注意との指摘もある。体が暑さに慣れる「暑熱順化」が長期休暇でいったんリセットされることがあり、再びリスクが高まるという。

 神戸市健康局は、発症した場合の応急処置として涼しい室内や車内、日陰に移動し、衣服を緩めて保冷剤や氷で首筋、脇の下、足の付け根を冷やすことを推奨。意識がない場合はすぐに救急車を呼び、無理やり水を飲ませないよう呼びかけている。(横田良平)

© 株式会社神戸新聞社