杉浦幸『ヤヌスの鏡』では先生役の山下真司さんに30回も投げ飛ばされました

昼は真面目な女子高生、夜はケンカも辞さない不良少女になるという、振り幅が大きい役に挑戦した杉浦幸

青春時代に夢中になったドラマの裏には私たちの知らない“ドラマ”がいっぱい。出演者ご本人を直撃し、今だから話せるエピソードをこっそりお届け!

【『ヤヌスの鏡』(フジテレビ系・’85年~’86年)】

ふだんは真面目で気弱な優等生・裕美(杉浦幸)が、別人格である不良少女・ユミに豹変し、夜の繁華街で大暴れするサスペンス&学園ドラマ。「古代ローマの神・ヤヌスは……」と始まるオープニングナレーションが怖かった。

「芸能界デビューとほぼ同時に『ヤヌスの鏡』の主演が決まったため、心の準備も、技術的な準備もまったくできていませんでした。だから、1~3話の試写を見たときに演技が下手すぎて“これをテレビで放映して、本当にいいの!?”ってゾッとしました」

こう振り返るのは、タレントで女優の杉浦幸さん(54)。昼は真面目な女子高生、夜はケンカも辞さない不良少女になるという、振り幅が大きい役に挑戦した。

「撮影に入る前、本当はお芝居のレッスンや、ケンカのシーンのための合気道の稽古をする予定でしたが、スケジュールが前倒しになったため、ぶっつけ本番で演技を覚えていきました」

’80年代を席巻した大映ドラマならではの、過剰な演出や浮世ばなれしたセリフにも悩まされた。

「ウエディングドレス姿でオープンカーに乗ったり、風見しんごさんに『昨夜はどこに行ってたんだよ』と聞かれ『天の川で夕涼みしてたのさ』と答えたり……。どんな気持ちで演じていいのか困るシーンが多いんですよね(笑)」

■撮影中に意識を失い、気がつけば病院に

初井言榮さん演じる祖母から、折檻されるシーンも印象に残っている。

「テレビ局には『そんなにぶたないで』という手紙が届くこともあったほどですが、初井さんはちゃんと寸止めしてくださっていました。でも、私は痛い表情がなかなか作れなくて。そんなとき、監督から定規でペシッと叩かれて『その顔だよ』と言われて、ハッとしたことも。父親役の前田吟さんは、私が監督に怒られてどうしていいのかわからなくなると、私が冷静になれるよう『お手洗いに行く』などと理由を作り、『大丈夫、大丈夫』と励ましてくださいました」

教師役の山下真司に何度も投げ飛ばされるシーンにも挑戦。

「20回も30回も投げ飛ばされていると、お互いに疲れて間合いが悪くなるんです。それで、受け身をうまく取れずに、頭を強く打ってしまいました」

意識を失い、気がついたのは病院だった。

「目が覚めたとき、3人くらいの医師がじゃんけんをしていました。レントゲンを撮るときに上半身裸になるからなのか、誰が担当するのかを決めていたみたい」

むちうちと診断され、最低1カ月は首にコルセットをするように指導されたがーー。

「もちろん、次の日の朝から、普通に撮影に戻りました。悪夢を見てガバッと起き上がるシーンは痛くてできませんでしたけど(笑)」

体を張った撮影現場が、女優として成長させてくれたのだ。

【PROFILE】

杉浦幸

’69年、東京都生まれ。『ヤヌスの鏡』の主役に抜擢されて芸能界デビュー。女優のほか、パチンコ番組やバラエティ番組などで活躍。最新情報はオフィシャルブログをチェック

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