ウクライナから避難してきた11歳の少女が始球式に挑戦「忘れてほしくない」初めて付けたグローブで猛特訓の結果は?

ウクライナから避難してきた少女がプロ野球の始球式に挑戦しました。ロシアによる軍事侵攻から約1年半、少女が始球式に挑んだワケは。

5日、バンテリンドームナゴヤで行われた、ドラゴンズ対スワローズの試合。この日、ウクライナからやってきたひとりの少女が、マウンドに立ちました。

名古屋市内で暮らす11歳のアルビナ・デルカッチさん。去年6月、ウクライナ東部の都市・ハルキウから、家族5人で避難してきました。

(記者)夏休みの宿題はこれで終わり?

(アルビナさん)「まだある。これ全部」

名古屋市内の小学校に通う6年生のアルビナさん。日本での生活にも徐々に慣れてきて、日本語も上達しました。

(アルビナさん)「一番好きなのはギョーザ。うどんも好き」

(記者)ほかに好きなものは?

(アルビナさん)「アイスクリーム」

そんなアルビナさんに今回、声がかかったのが、バンテリンドームでの始球式の話。試合観戦に訪れる夏休み中の子どもたちに、平和の大切さを訴えるイベントの一環でした。

(アルビナさん)「自分のやってみたいことができる機会を与えてもらえたような感じです」

ロシアによる軍事侵攻から約1年半。祖父母は今も戦火のウクライナにいます。アルビナさんは「日本の人たちに戦争中のウクライナのことを忘れて欲しくない」という思いから、母親のオレーナさんと話し合い、始球式を引き受けました。

(母・オレーナさん)「私たちは日本で安心して生活できていることをとてもうれしく思いますが、ウクライナではまだ戦争は終わっていません。これが現実なんです」

(記者)早く戦争が終わってウクライナに帰りたい?

(アルビナさん)「帰りたい」

始球式の前日 。自宅近くの公園で、父親のヴァレリさんと練習です。しかし…

(父・ヴァレリさん)「ウクライナに野球はありません」

野球はウクライナではあまり知られていないスポーツで、アルビナさんがグローブを着けるのも今回が初めて。始球式に向けて2週間ほど前から練習を続けてきましたが…

まだちょっとぎこちない様子。

そこで取材スタッフも練習に加わり、ピッチングフォームを猛特訓です!

この日は約50球を投げ、徐々に遠くまでボールを投げられるようになりました。

(アルビナさん)「疲れていない。あすの始球式ではボールを上手に投げられるように頑張ります」

そして、始球式の本番当日。ドームを埋め尽した約3万6000人の観客を前に、少し緊張した面持ちのアルビナさん。

そして、ついに…

(アナウンス)「始球式を実施致します。投手を務めるのは、ウクライナ出身の小学生 アルビナ・デルカッチさん」

ボールはワンバウンドしたものの、見事、キャッチャーのもとに。アルビナさんの堂々としたピッチングにドームは歓声に包まれました。

(母・オレーナさん)「とても感動して泣きそうになりました。こんな貴重な機会をいただけて本当に感謝しています」

(アルビナさん)「少し緊張した」

(記者)始球式に点数をつけると?

(アルビナさん)「60点。大丈夫、楽しかった」

大舞台でしっかり役目を果たしたアルビナさん。母親オレーナさんからのご褒美は?

(母・オレーナさん)「どこかでアイスクリームを食べに行くことを約束しました」

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