過去最大上げ幅、最低賃金954円に 労は「評価」、使は「重い」 地方審答申

 栃木地方最低賃金審議会(会長・杉田明子(すぎたあきこ)弁護士)は7日、2023年度の本県の最低賃金を1時間当たり41円(4.49%)引き上げ、954円に改定するよう、栃木労働局の奥村英輝(おくむらひでき)局長に答申した。引き上げは20年連続で、賃金表示が現行方式となった02年度以降、引き上げ幅は最大となった。異議申立期間を経て、10月1日から適用される予定。

 最低賃金は、厚生労働省の中央最低賃金審議会が、経済状況に応じて都道府県をA-Cの三つに分け、目安額を示す。それを参考に地方審議会が議論して決める。7月28日に示された本県の引き上げ目安額はBランク(40円)だった。

 栃木地方最低賃金審議会は公益委員、労働者、使用者の代表委員各5人で構成し、そのうち各3人が計3回の専門部会で調査、審議した。物価高騰などを考慮し、最終的に引き上げ額は目安額を1円上回った。

 出席者によると、労働者側は「引き上げが不十分では労働力が県外に流出する」などとして、42円を引き上げるよう主張した。一方、使用者側は新型コロナウイルスやエネルギー価格の高騰など経営環境の厳しい現実を訴え、37円の引き上げにとどめるよう求めた。

 双方の主張は折り合わず、公益代表委員が41円を提示し、採決の結果、賛成多数で決定した。使用者側の5人は反対したという。

 答申では、引き上げによる負担が特に大きい中小企業や小規模事業者への支援強化の必要性を指摘した。生産性向上の支援を通じて、賃上げの原資確保につながる取り組みの徹底を求める要望も盛り込まれた。

 労働者側の中島一実(なかじまかずみ)連合栃木副会長は「本県の時給は低いので、目安額と同額はあり得ないと考えていた。目安額よりプラスになったことを評価しているが、今後もさらなる引き上げを求めていく」。

 使用者側の鈴木健治(すずきけんじ)県経営者協会部長は「想像以上の引き上げ額で、企業に重くのしかかってくる。国には充実した企業への支援を期待したい」と厳しい表情で語った。

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