「被爆者も呼んでほしかった」 残念がる参列予定者 平和式典縮小、長崎市職員ら対応追われる

平和祈念式典の縮小開催で設営を進める関係者=長崎市、出島メッセ長崎

 台風6号の長崎県接近に伴い、9日の「長崎原爆の日」に開く長崎市の平和祈念式典会場を平和公園(松山町)から出島メッセ長崎(尾上町)に変更し、市関係者のみの縮小開催することとなり、関係者は7日、参列予定者への連絡や会場の撤去、設営など対応に追われた。参列予定者からは、被爆者の姿がほとんど見えない式典に「メッセージ性が下がる」との危惧も示された。
 会場変更などは6日夕に決定。市原爆被爆対策部の職員はそこから約750人の一般参列者らへの電話連絡を始め、7日午前までに終えた。急きょの変更で、岸田文雄首相ら来賓にビデオメッセージを依頼するなど調整事項が山積。昨晩から日をまたいで作業をしている職員もいるという。
 平和公園では7日朝から平和祈念像前に設置された大テントの撤去が開始。次々とトラックが出入りしていた。毎年8月9日に合わせて長崎市を訪れているという兵庫県の田中信一さん(73)は、会場変更を知り「平和の大切さを感じる気持ちがあればどこにいても同じ」と話し、祈念像をカメラに収めた。
 ビデオメッセージや献花の人選など調整が続いており、式典内容は2日前でも「流動的」(市担当者)。出島メッセ長崎では7日、音響確認と並行し、前日に並べられたイスの一部を撤去するなど、レイアウト変更が行われていた。
 参列予定者からは縮小開催を残念がる声も。被爆者代表として献水を予定していた長崎原爆被災者協議会の森内實さん(86)は「必ずしも8月9日じゃなくてもいいのではないか。延期し、被爆者も呼んだ上で式典をしてほしかった」とやるせなさをぶつけた。
 同じく献水を担当予定だった長崎被災協・被爆二世の会・諫早の事務局長、大宮美喜夫さん(55)は、被爆者を含む一般参列が中止されたことに驚きを隠さない。「何とも言えない。『被爆者がいない式典』という、いつか来る未来が現実化したような衝撃だ」
 司会に選ばれていた県立長崎南高2年の岩永陽美さん(17)は、1日2時間の練習を重ねてきただけに「やってみたかった」とぼそり。体験記を朗読する国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館のボランティア活動をしており「今月26日に朗読する機会があるので、そこに向けて頑張りたい」と気持ちを切り替えた。
 一方、全国被爆体験者協議会の濵田武男副会長(83)は9日に岸田首相が長崎市内で会見した後、記者会見を開く予定だった。「(年齢的に訴えることができるのは)今年が最後になるかもという不安はある。『一日も早い被爆者認定を』と言わなければと思っていた。このまま終われないので改めて県市に要請をしていく」と力を込めた。

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