あす長崎原爆の日 平和祈念式典、台風接近で60年ぶり室内開催 式次第は流動的

台風接近の影響で平和祈念式典が60年ぶりに屋内開催となり撤収作業が進む平和公園=長崎市松山町

 被爆地長崎は9日、78回目の原爆の日を迎える。台風6号の長崎県接近を受け、長崎市主催の平和祈念式典は市関係者のみでの屋内開催に変更され、被爆者の多くや首相、各国大使らは参列しない。会場変更の決定から一夜明けた7日、市職員らは新たな式次第の検討や、平和公園(松山町)に代わる出島メッセ長崎(尾上町)の会場設営などを進めた。
 核大国ロシアのウクライナ侵攻が長期化し、核兵器使用のリスクが高まる中、今年5月にもう一つの被爆地広島で先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が開催。首脳たちは原爆資料館訪問や被爆者との面会を通じて「被爆の実相」に直接触れた半面、発表した核軍縮文書「広島ビジョン」では核抑止力を正当化し、被爆者らを落胆させた。
 縮小した式典で鈴木史朗市長は平和宣言をする。核抑止力を前提とするG7の考え方を批判し「核抑止依存からの脱却」「核兵器をなくすしかない」と強く働きかける。市は来賓あいさつに代わる岸田文雄首相らのビデオメッセージを流せないか調整中で、式次第は流動的。式典の様子は日本語と英語でインターネット中継する。7日は平和祈念像前に設置していた大テントを撤去した。
 3月末の被爆者数は県全体の7割強を占める長崎市で2万617人(前年同期比1785人減)、平均年齢は84.90歳。高齢のため「式典参列は今年が最後」と考えていた被爆者もいる。今年はそれぞれの場所から原爆死没者を悼み、世界平和や核兵器廃絶を願う。

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