全国の被爆者団体 活動継承に苦慮 高齢化や会員数の減少… 被爆2世との連携に試行錯誤

熊本被団協の会員名簿を見つめ、活動の継承に向けた思いを語る原田さん=熊本市内

 原爆投下から78年が経過し、全国の被爆者団体が活動の継承に苦慮している。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)によると、被爆者の高齢化や会員数の減少により、今年5月までに被団協を構成する11県の団体が解散や休止、脱退に追い込まれた。一方、被爆2世が会長に就く団体も現れ、次世代へつなぐための試行錯誤が続いている。
 被団協によると、全都道府県に団体があったが、1980年代後半、山形県の団体が解散。2000年代に入り、▽奈良県(06年)▽滋賀県(08年)▽和歌山県(17年)▽栃木県(18年)▽宮崎県(21年)▽石川県(22年)▽福井県(23年5月)が解散した。休止は新潟県(21年)と群馬県(22年)。徳島県は01年に脱退した。20年以降に5県で解散・休止が相次いでおり、衰退が深刻化している。
 厚生労働省のまとめによると、被爆者健康手帳を持つ全国の被爆者は22年度末で11万3649人。平均年齢は85.01歳で前年から0.48歳上昇し、初めて85歳を超えた。長崎県は2万8339人(県、長崎市交付分)だが、団体存続の厳しさは例外ではない。長崎の被爆者5団体の一つ「県被爆者手帳友愛会」は昨年3月末、高齢化や財源不足などを理由に解散した。

■近づく限界
 長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)副会長で、県外被爆者と長年の交流がある横山照子さん(82)は、近年の解散や休止の事例について、被爆者側に「自分たちにしか活動できない」との思いが強すぎ、被爆2世ら次の世代による運営体制を築けなかったケースも複数あったと打ち明ける。
 「被爆者が客観的に自分自身を見つめて身体的、時間的な限界が近づいていることを理解し、次世代に任せるという意識を持たなければ、活動はその代で終わってしまう」。横山さんはそんな危惧の念を抱く。
 長崎被災協は昨年から、核兵器廃絶運動などに込められた「被爆者の心」を伝えるため、被爆者運動の歩みを市民に伝える学習会を続ける。横山さんは「一人でも多くの若い人たちが『心』を受け止め、理解してくれれば、被爆者たちは安心して活動を託せるようになるのでは」と先を見る。

■2世が会長
 熊本県や富山県などでは団体の会長に被爆2世を据える動きも出てきた。
 熊本県原爆被害者団体協議会(熊本被団協)では、20年に原田俊二さん(77)が被爆2世として初めて会長に就いた。役員15人が県全域に散らばっている上、高齢で集まりにくく、役員会を開くのも容易ではない状況に直面し、役員に関する規約を改定。「意欲のある2世が出てきた時に活動しやすいように」と、役員に被爆2世を入れることなどを盛り込んだという。
 熊本被団協の取り組みの一つが平和学習での語り部活動。ただ、県内で語り部として回っている被爆者は3、4人しかおらず、原田会長は「(継承のため)2世も語れるようにならなければ」と焦りを隠さない。
 さらに、被爆地以外で被爆者運動や平和活動を広げていく難しさも指摘する。「何かをやろうとしても情報が少なくノウハウもない。被爆者が少なくなる中、積極的に活動する2世を確保できていないのが現状。九州各県の活動も先細りし(活動したい2世がいても)『受け皿』がなくなってきている」と話した。

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