7月は27件発生、3年ぶりに前年同月を上回る 4年ぶりにすべて「破産」、過剰債務・物価高の影響広がる

~ 2023年7月 「負債1,000万円未満」倒産の状況 ~

2023年7月の負債1,000万円未満の企業倒産は27件(前年同月比12.5%増)で、7月では2020年以来、3年ぶりに前年同月を上回った。ただ、1月の32件を下回り、今年に入り最少を記録した。
「新型コロナ」関連倒産は5件(前年同月9件)発生した。
コロナ禍からの業績回復の遅れに加え、過剰債務や物価高、人手不足など、経営環境は厳しさを増しており、資金繰り悪化の増加が懸念される。

産業別は、最多がサービス業他の12件(前年同月比7.6%減)。次いで、小売業4件(同33.3%増)、卸売業と運輸業が各3件(前年同月ゼロ)と続く。
原因別は、販売不振が24件(前年同月比50.0%増)で、全体の約9割(88.8%)を占めた。コロナ禍からの業績回復が遅れた小・零細企業の息切れが増えている。
資本金別は、1千万円未満(個人企業他を含む)が25件(同13.6%増)で、約9割(92.5%)を占めた。
形態別は、7月に発生した27件すべてが破産だった。負債1,000万円未満の倒産は、小・零細企業がほとんどで、人的・資金的な制約もあり経営再建が難しいことを示している。

実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の元本返済がピークを迎え、最長3年間の返済猶予が終了して利子の支払いも始まった。コロナ関連支援策は効果が薄まり、業績回復の遅れから返済原資の確保が困難な企業も少なくない。そのタイミングで押し寄せた物価高や人件費上昇などで資金繰りは余裕を欠いている。また、経済活動の回復で運転資金の需要が活発になるが、過剰債務の解消が進まず、新たな資金調達も出来ないことで業績回復が先送りとなっている企業は多く、負債1,000万円未満の倒産は一進一退の推移が続くとみられる。

※本調査は、2023年7月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。


7月の倒産27件、3年ぶりに前年同月を上回る

2023年7月の負債1,000万円未満の倒産は27件(前年同月比12.5%増)で、7月としては3年ぶりに前年同月を上回った。件数27件は、7月としては2012年の20件、2022年の24件、2015年の26件に次いで、2009年以降の15年間で4番目の少なさだった。
コロナ禍の資金繰り支援策の副作用も大きな課題になっている。急激な売上減少と借入増加で過剰債務に陥り、倒産時の負債が1,000万円以上に膨らんだ小・零細企業も少なくない。
コロナ禍からの業績回復が遅れ、物価高や人手不足などへの対応も企業収益の悪化に拍車をかけている。企業体力が脆弱な中小・零細企業を中心に、企業倒産は一進一退の推移が続く可能性が高い。

【産業別】10産業のうち、4産業で前年同月を上回る

産業別では、10産業のうち、増加が4産業、減少も4産業で、同件数は2産業だった。
最多は、サービス業他の12件(前年同月比7.6%減)で、7月としては3年連続で前年同月を下回った。構成比は44.4%(前年同月54.1%)だった。
このほか、情報通信業1件(前年同月比50.0%減)が3年連続、建設業2件(同50.0%減)が2年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
また、不動産業は2年ぶりに発生しなかった(前年同月1件)。
一方、製造業2件(前年同月比100.0%増)と卸売業3件(前年同月ゼロ)、運輸業3件(前年同月ゼロ)が3年ぶり、小売業4件(同33.3%増)が2年ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。

業種別では、一般貨物自動車運送業(前年同月ゼロ)、食堂,レストラン(同ゼロ)、喫茶店(同1件)が各2件。大工工事業、一般管工事業、オフセット印刷業、看板・標識機製造業、一般乗用旅客自動車運送業、塗料卸売業、化粧品卸売業、中古自動車小売業、電気事務機械器具小売業、紙・文房具小売業、ラーメン店、バー,キャバレー,ナイトクラブ、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所など各1件(同ゼロ)で、それぞれ前年同月を上回った。

【形態別】すべて消滅型の破産

形態別は、27件(前年同月比17.3%増)が「破産」だった。すべて破産だったのは、7月としては2019年以来、4年ぶり。
負債1,000万円未満の倒産はほとんどが小・零細企業のため、経営資源に乏しく再建より破産を選択している。
一方、再建型の民事再生法は4年ぶり、会社更生法は2009年から15年連続で、それぞれ発生しなかった。また、特別清算は5年連続、取引停止処分は7年連続で、それぞれゼロだった。

【原因別】販売不振が約9割

原因別の最多は、「販売不振」の24件(前年同月比50.0%増)で、7月では3年ぶりに前年同月を上回った。
負債1,000万円未満の約9割(88.8%)を占め、前年同月の66.6%から22.2ポイント上昇した。
このほか、「事業上の失敗」が1件(前年同月ゼロ)で、3年ぶりに発生した。
また、代表者の病気や死亡を含む「その他」が前年同月と同件数の1件だった。
一方、「他社倒産の余波」は1件(前年同月比80.0%減)で、3年連続で前年同月を下回った。
自治体や金融機関は創業支援に積極的だが、負債1,000万円未満の倒産では経営計画の甘さなどから業歴が短い企業も少なくない。

【資本金別】1千万円未満が9割超

資本金別は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が25件(前年同月比13.6%増)で、3年ぶりに前年同月を上回った。構成比は92.5%(前年同月91.6%)で、7月では3年連続で90%台になった。内訳は、「個人企業他」10件(前年同月比±0.0%)、「1百万円未満」7件(同40.0%増)、「1百万円以上5百万円未満」5件(同28.5%減)、「5百万円以上1千万円未満」3件(前年同月ゼロ)。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が前年同月と同件数の2件だった。また、「5千万円以上1億円未満」と「1億円以上」は、2010年より14年連続で、それぞれ発生がなかった。

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