【F1インタビュー】山本雅史氏「3年目の角田はさらに成長している」F2参戦中の岩佐にも昇格のチャンスはあると語る

 元ホンダの山本雅史氏が、2023年F1第13戦ベルギーGPの現場を訪れた。スパでは久しぶりに角田裕毅(アルファタウリ)に会ったとのことで、「いい顔をしていた」という。またFIA F2でタイトルを争う岩佐歩夢(ダムス)に関しても、成長を感じたと明かした。

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──3年目の角田裕毅(アルファタウリ)選手のパフォーマンスについては?

山本雅史氏(以下、山本氏):ニック(・デ・フリース)がシーズン途中で解雇されたということで、まずは第一関門を突破したと思います。

──この結果は想像していましたか。

山本氏:正直、予想はしていませんでした。もう少し、ニックがやると思っていました。ただ、いま振り返ると、角田が「F1は、F2から3カテゴリーぐらい違うほど特別な存在」だと言っていたとおりなんだと思います。

──角田選手の印象は?

山本氏:ベルギーGPで久しぶりに会って話をしたんですけど、すごくいい顔をしていました。そのとき、(ダニエル・)リカルドのことを尋ねたら、いろんなことを学んでいると語っていて、3年目に入って、さらに成長しているという印象を受けました。

アルファタウリ新CEOのピーター・バイエルから力走を讃えられる角田裕毅

──今シーズンの角田選手の成長には、マネージャーのマリオ宮川さんの存在も大いに影響していると思います。そのマリオさんに角田選手を引き合わせたのが山本さんだったと角田選手は語っています。どのような経緯で山本さんはマリオさんと知り合ったのですか。

山本氏:2016年か2017年のイタリアGPのときに、かつてホンダF1のビジネスアドバイザーを務めていた海野(勝)さんとレストランで食事をしていたら、別のテーブルにマリオさんがいて、挨拶に行ったんです。マリオさんのお父様は有名なデザイナーで、私がお父様の本を持っていると言うと、マリオさんはとても喜んで、お連れの方が帰った後、こちらのテーブルに合流してきたんです。それがきっかけで、マリオさんが日本にやってきたときはプライベートで食事もしたり、マリオさんが出ているテレビ番組に何度か出演したことがありました。

 その後、角田がF1にデビューし、マリオさんから「ユウキは速くて、面白いけど、マネージャーは大切だよね?」という話になって、私が「マリオさんがバックアップしてくれるといいんだけどなあ」とお願いしたら、「じゃ、とりあえず、紹介して」と言ってくれたので、2021年のモナコGPのときに私がふたりを引き合わせたんです。今回、ベルギーGPでマリオさんに会って、2024年の契約について、いまどんな状況になっているのか聞きたかったんですけど、マリオさんならしっかりと角田をサポートしてくれると信じています。

角田裕毅(アルファタウリ)とマネージャーのマリオ宮川氏

──岩佐歩夢(ダムス)選手もF2で頑張っていますね。

山本氏:岩佐とは、たまに電話で話をしているけど、実際に会って話をして、とても成長しているのがわかって良かった。安心しました。

──本人は今年がF2の最後の1年と言っていますが?

山本氏:そうだと思います。レッドブルはF2で3年目はやらせないですから。

──そうなると、選択肢はF1にステップアップするか? 日本でレースをするか? どこかのチームのリザーブになるか? の3つぐらいしかないと思います。

山本氏:(リアム・)ローソンを見ていても、その3つしかないでしょうね。

──F1にステップアップするための条件は?

山本氏:もちろん、チャンピオンを最後まで諦めずに狙ってほしいんですが、たとえチャンピオンを獲れなくても、ランキングで角田を上回ればチャンスはあると思います。

──つまり、F2で今年2位以上を取れと?

山本氏:3位じゃダメ。(角田を上回る)2位以上です。そのことをベルギーGPで岩佐と話をしていたら、「大丈夫です。まだまだ(チャンピオンは)射程圏内ですから。むしろいま一番調子がいいのはランキング5位のビクトール・マルタンス。ARTがなにか予選でいいセットアップを見つけたようだ」と言ってくれました。それを聞いて、頼もしいなと安心していました。

──長い時間、ありがとうございました。

左から岩佐歩夢(ダムス)、HRC渡辺康治社長、ヘルムート・マルコ(レッドブル モータースポーツコンサルタント)

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