ソフトボール男子 島原工が初V! 今大会長崎県勢初の「金」 北海道インターハイ

【ソフトボール男子決勝、島原工-啓新】3安打13奪三振で完封した島原工のエース橋本=はまなす国体記念石狩市スポーツ広場

 全国高校総合体育大会(インターハイ=翔び立て若き翼 北海道総体2023)第18日は8日、各地で5競技が行われ、長崎県勢はソフトボール男子の島原工が決勝で啓新(福井)を3-0で下して初優勝した。今大会長崎県勢初の金メダル。
 島原工は準決勝で飛龍(静岡)に1-0でサヨナラ勝ち。決勝は初回に先制すると、二、五回に1点ずつを加えた。守ってはエース橋本が2試合連続完封。2回戦から5試合を戦った島原工は無失点で頂点に立った。

◎エース橋本 13奪三振完封

 最後に投じた得意のドロップを打者が見送り、捕手白石のミットに収まる。島原工のエース橋本はその場で跳びはね、駆け寄ってきた仲間たちと歓喜の輪をつくって人さし指を大空に突き上げた。春夏を通じて悲願の全国初優勝。大歓声が観客席に響き渡った。
 橋本は地元開催だった春の全国選抜大会で全6試合に先発。島原工は決勝に勝ち上がったが、インターハイ3連覇中だった王者大村工が前に立ちはだかった。4日間で計508球。連投の疲れもあり4点を失って敗れた。過去最高の準優勝にも悔しさは募った。「もう負けたくない」と思った。
 そこからもう一度、鍛え直した。持ち味の制球力に磨きをかけ、球威を落とさないため、走り込んで体力向上にも力を入れた。6月の県高総体決勝は王者を2安打完封し、北海道に乗り込んだ。
 今大会2回戦から準々決勝までの3試合は宮﨑斗との継投。準決勝、決勝は一人で投げ抜いた。特に準決勝は手に汗を握る投手戦。「自分が打たれなければ負けない」。最後まで我慢強く腕を振り続けた。決勝は雨で約1時間の中断があったが、集中力を切らさずに打者を翻弄(ほんろう)。五回は連打を浴びて1死二、三塁のピンチを背負いながら、動じずに後続を抑えた。3安打13奪三振の完封。大黒柱の役目を果たした。
 表彰式後の集合写真。選手たちの手には長崎のライバル3校のTシャツがあった。初優勝は同時に“県勢4連覇”でもある。渕上監督は「大村工をはじめ、各校が切磋琢磨(せっさたくま)して互いに刺激しあっている。それがレベルアップにつながっている」と言う。金メダルと笑顔が輝いた記念写真は、その証しだった。

 ◎代打酒井、準決勝サヨナラ打 「自分の役割果たせた」

【ソフトボール男子準決勝、飛龍-島原工】島原工7回裏2死一塁、代打酒井が左中間へサヨナラ打を放つ=はまなす国体記念石狩市スポーツ広場

 飛龍(静岡)との準決勝七回裏2死一塁。ここで倒れれば延長タイブレークに突入する。島原工の代打酒井は燃えた。「今まで出塁することができず、足を引っ張っていた」。5球目を強振。打球は左中間を抜けた。値千金のサヨナラ打に「役割を果たせて安心した」と笑顔がはじけた。
 初戦の2回戦、3回戦は1番指名打者で出場したが5打数無安打。調子が上がらず、準々決勝から徳永に打席を譲った。その徳永が準々決勝で本塁打の活躍。「本来なら自分が出塁して流れをつくらないといけないのに…」。悔しさを押し殺し、出番を待っていた。
 勝負を左右する重要な場面で、その時がやってきた。七回裏2死一塁。渕上監督に呼ばれた。「しっかりバットを振りなさい。それが酒井の持ち味だ」と自分を信じて送り出してくれた。もし無死二塁から始まるタイブレークに突入すれば、勝敗は運の要素も大きくなる。「チャンスをくれた。自分で勝負を決めてやろう」と打席に入った。
 3ボール1ストライク。5球目のライズボールだった。左中間へはじき返し「落ちろ」。そう念じた打球は風に乗り、飛び込んだ中堅手の横を抜けた。一塁ランナーの楠田が一気にホームに。両手を広げてベンチに戻ると、仲間から手荒い祝福を受けた。
 期待に応えて放った一打は勝利だけでなく、続く決勝への勢いをもたらした。

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