社説:人事院勧告 危機感募り引き上げか

 国家公務員一般職の給与が本年度、大幅に引き上げられることになりそうだ。

 人事院が、最も多い行政職の月給を平均0.96%(3869円)増とするよう、内閣と国会に勧告した。

 上げ幅が0.23%にとどまった昨年度を大きく上回り、1.02%だった1997年度以来、26年ぶりの高水準となる。

 増額分は、企業のベースアップに相当する。物価高などで上昇した民間給与に合わせるのだから、妥当ともいえよう。

 ただ、定期昇給を含めた月収は2.7%増、年収は3.3%増に及ぶ。国民に対して丁寧な説明が求められるだろう。

 今回の特徴は、若手の上げ幅を手厚くしたことである。

 初任給の積み増し額は、高卒1万2千円、大卒1万1千円とし、90年度以来、33年ぶりの1万円超えとした。

 背景には、国家公務員の志望者減や、若手の離職増がある。

 昨年度の採用試験で、総合職の志願者は春と秋の合計で約1万8千人だった。これは、10年前と比べて約27%も少ない。

 若手男性の7人に1人が、離職の意向を持つとの調査もある。

 待遇面で民間に見劣りし、優秀な人材を得るのが難しくなっているのは、明らかだ。

 人事院は、公務員のなり手が減れば、行政運営に支障が生じかねないと危機感を募らせている。

 今回は、給与の引き上げだけでなく、勤務実態を改善する法改正なども勧告した。

 その一つは、職員が希望し、業務に支障がなければ、土日のほかに週1日だけ平日も休めるようにするものだ。

 残りの日は長く働き、総勤務時間を維持しなければならないが、多くの職員は「週休3日」が可能となるという。

 国家公務員の一部は激務で、家庭生活との両立が、困難ともされる。同様の工夫を重ね、働き方の改善に努めていくのが大事である。

 財務省は、勧告通りとなった場合は、本年度の人件費は当初予算と比べて1720億円程度増えると試算している。これに準じて、地方公務員の給与を増額すると、地方自治体の負担額も2870億円程度増えるとみられる。

 勧告を受け入れるかどうかは、官房長官らの関係閣僚会議で検討される。行政事務の効率化なども議論したうえで、適切な判断をしてもらいたい。

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