「核兵器廃絶を訴え続ける」被爆者のサーロー節子さんがカナダへ帰国 「広島は道徳的なリーダシップの先頭に立ってほしい」

G7広島サミットにあわせて広島を訪れて、6日の平和記念式典にも出席していた被爆者のサーロー節子さん(91)が9日、カナダへと帰国の途につきました。

9日午前、広島空港にはカナダに戻るサーロー節子さんの姿がありました。

広島の被爆者 サーロー節子 さん(カナダ在住)
「乗り継ぎだとかいろいろあって、20時間は計算しないといけない。ちょっとたいへん」

広島の被爆者で、核兵器禁止条約の成立に貢献したカナダ・トロント在住のサーロー節子さん。5月のG7サミットにあわせて広島に帰郷しましたが、サミットで発表された核軍縮に関する文書「広島ビジョン」については失望感を隠せませんでした。

サーロー節子 さん
「わたしは、たいへんな失敗だったと思う」

その理由は、広島ビジョンが、「核兵器は存在する限り、防衛目的のために役割を果たす」としていたためです。サーローさんが口火を切った核抑止論に対する批判―。

平和宣言 広島市 松井一実 市長
「世界中の指導者は、核抑止論は破綻しているということを直視し…」

被爆者団体からも批判が相次ぎ、広島市の松井市長は平和宣言で、核抑止論からの脱却に言及しました。

広島滞在中、さまざまな場面で発信を続けたサーローさん。5日は、各政党の代表などが出席した核廃絶に向けた国会議員の討論会に参加。被爆体験に基づいた自らの信念について語りました。

サーロー節子 さん
「(広島ビジョンは)核抑止論を正面切って正当化する、そういう試みだったと思う。広島で生き残ったわたしたち、われわれの立場としては、二度とああいうことが起きてはいけないんだ。核兵器廃絶のみが、われわれのオプションなのだ」

一方で、日本は被爆国でありながら、核廃絶を目指す核兵器禁止条約に署名・批准していません。サーローさんは力を貸してほしいと呼びかけました。

サーロー節子 さん
「どうぞ、海外でがんばっているわたしたちと一緒にやってください。わたしたちがやっていることと、(日本)政府がやっていることが一貫性がないので、非常に心細く思っている。どうぞ、みなさん、一緒にがんばりましょう。ああいうことが二度とないために」

9日、支援者と別れを惜しんだサーローさん。今後も、カナダから核廃絶を訴え続けるといいます。

広島の被爆者 サーロー節子さん(カナダ在住)
「この美しい山々、瀬戸内海の海、広島ってなんと美しいところだと思う。広島で生活を続けているみなさん方にわたしたちが体験したことの意味を深く考えてもらい、道徳的なリーダーシップの先頭に立ってほしい。それを広島のみなさんにお願いしたいと思う」

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