「木の酒」研究棟を新設 茨城・つくば森林総研 機器集約し製造効率化

新設された研究棟内に設置された減圧蒸留機=つくば市松の里

森林総合研究所(茨城県つくば市松の里)は、開発研究している木材の蒸留酒「木の酒」を製造する研究棟を新設した。製造に必要な発酵タンクや蒸留機といった機器を1カ所に集約。製造効率の向上のほか研修施設として活用し、民間企業に普及させるのが狙い。9日、報道機関などを対象に完成見学会を開いた。

木の酒は、木材に食品用の酵素と酵母を加え、アルコール発酵させて造る。樹種によって味や香りに特徴がある。同研究所は木材を使ったバイオエタノール燃料の研究を進める過程で、食品にも応用できると考え、2017年から飲用アルコールの試験を始めた。

現在はスギ、シラカンバ、ミズナラ、クロモジの4樹種を蒸留酒にし、生産工程を確立したり安全性を確認したりと、実用化に向けた研究を進めている。

新設したのは「木質バイオマス変換新技術研究棟(木の酒研究棟)」。床面積約140平方メートルの平屋で、研究所内外に分散していた五つの製造機器を1カ所に集めた。その結果、製造日数は従来の半分の1週間に短縮でき、効率が上がったという。

また、木材から蒸留酒が出来上がるまでの全工程を一つの施設で見られるため、木の酒の事業展開を検討する民間企業や団体が、製造技術を学ぶ研修施設としても活用できる。

同研究所によると、商品化に向けて特許契約を結んでいるのは4社で、数社が事業化を希望している。

木から造った醸造酒(左側)と蒸留酒=つくば市松の里
「木の酒」製造のために新設された研究棟=つくば市松の里

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