茨城県産業技術センター 接合技術で国際賞 マグネシウム合金 新幹線軽量化

摩擦攪拌接合したマグネシウム合金を紹介する行武栄太郎研究推進グループ長=県庁

茨城県産業技術イノベーションセンターは9日、同センターの研究チームが、加工の難しいマグネシウム(Mg)合金を用いた製品開発で優れた例に授与される国際マグネシウム協会(IMA)の部門表彰を受賞したと発表した。地方の公設試験研究機関としては国内初。次世代新幹線車両開発での技術提供に協力した。県は約20年間にわたりマグネシウムの試験研究をしており、県内企業への技術普及の弾みになると期待している。

同センターは同協会「IMAアワード」のプロセス部門賞をJR東日本(東京)や産総研(同)といった計八つの企業・研究機関と共に共同受賞した。内容は「次世代高速車両のマグネシウム合金製床材開発」。難燃性マグネシウム合金を使って開発した超軽量床材を、JR東の次世代新幹線開発に向けた新型試験車両「ALFA-X(アルファエックス)」に搭載した。

マグネシウムの質量は、一般的な部材のアルミニウムの3分の2ほどで、超軽量床材として車両の軽量化を実現。これにより時速340キロでの実走行運転が成功したことが評価された。

同センターの行武栄太郎研究推進グループ長らは、マグネシウム合金の接合のため基盤技術の開発を担った。開発では「摩擦攪拌(まさつかくはん)接合」を用いた。通常の溶接のように材料を溶かさず、摩擦熱を使って材料の強度の約9割を保ったまま接合できる。摩擦熱を発生させる装置の回転数や合金板との相性などを分析し、成功にこぎ着けた。

県は2004年からマグネシウムの幅広い加工技術に関する試験研究をしており、培った知見や経験も技術開発に寄与したという。車のホイールなどに用いる研究も進めているという。

同日、県庁で記者会見に出席した行武グループ長は「受賞を機に県内企業に技術を広めていきたい」と述べた。

摩擦攪拌接合したマグネシウム合金製床材=JR東日本提供

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