淡路島の大観覧車、ゴンドラが一つおきにしかない理由は? 復活への妙案、費用抑えて見栄えにも配慮 ワールドパークONOKORO

どこか変? ゴンドラがいつもと違う現在の大観覧車=淡路ワールドパークONOKORO

 淡路島民なら誰もが知っている大観覧車。兵庫県淡路市塩田新島の遊園地「淡路ワールドパークONOKORO」のシンボルとして親しまれている。写真は、虹色のゴンドラが青空に映える現在の様子を撮影したものだが…。何かがおかしい。よく見ると、ゴンドラの間隔は一つおき。数は全体の半分しかない。なぜ、こんな姿になったのか? 調べてみると-。(内田世紀)

 大観覧車は、阪神・淡路大震災で傷ついた「おのころ愛ランド公園」を改修し、明石海峡大橋の開通に合わせてリニューアルした1998年に造られた。

 高さ50メートル。ゴンドラは40基。約14分で一周する。大阪湾の眺望を楽しもうと、近年は年間入園者約30万人のうち8万人が利用する人気のアトラクションとなっている。

 しかし、この観覧車が昨年5月、開業以来初のトラブルに見舞われた。営業中に入園客を乗せた状態で、駆動が停止した。幸い非常用の予備エンジンが作動し利用客を無事に降ろすことができたが、故障の原因は分からなかった。

 同パークの清水浩嗣支配人(68)は「2社の専門業者が徹底的に調べたが、異常が見つからない。予備エンジンも最初はスムーズに動かず、不安が残った」と主要部品の交換を決めた。

 部品の調達は半年以上先になることが分かり、すぐに発注した。再開まで時間を要するため、ゴンドラの点検も行った。その結果、想像以上に老朽化していることが判明。海が近いためさびが進み、強風による傷みも激しかった。

 安全を最優先し、ゴンドラの交換を検討した。「全40台を交換する見積もりをしたら、かなりの高額。とても払える額ではなかった」と清水支配人。交渉はストップし、観覧車は存続の危機に立たされた。 □

 「園の経営ができなくなる。もうあきらめよう」という意見が上がる一方で、「観覧車は地域のランドマーク。何とか復活を」と望む従業員もいた。議論が平行線をたどる中、妙案を絞り出したのはパークの運営会社「ONOKORO」の津田豊代表(67)だった。

 観覧車が止まったのはゴールデンウイークの真っただ中で、遊園地が最もにぎわう時期。それでも、ゴンドラの稼働率は50%ほど。津田代表は「半分だけ交換してはどうか。新しいゴンドラにだけ、お客さんを乗せればいい」と提案した。

 発想の転換に、清水支配人も「それならできるかも」と賛同した。再び交渉を重ね、何とか賄える金額を引き出した。「それでも安くはない。思い切った投資です」

 今年に入り工事に着手。傷みがひどいゴンドラから順次外した。新たなゴンドラ20基は全て新調することにした。当初、夏休みに間に合う7月の完成を予定したが、物資の調達や部品の加工に時間がかかった。清水支配人は「2カ月ほど遅れそう。再開は9月の中旬」と話す。

 その間、数を半分に減らしたゴンドラは不規則な「歯抜け」の状態に。見栄えが良くない、との声も聞かれた。そこで同パークは違和感を解消しようと、さらに知恵を絞り、ゴンドラを一つおきに並び替えた。

 「夏休みのお客さんの目に留まる上、新しいゴンドラがきた時の作業もスムーズになる」と清水支配人。ホームページでは「なかなか見れないレアな観覧車。シャッターチャンスかも」とPRした。

 逆境をアイデアではね返し、地域のシンボルを守った同パーク。「実は、まだサプライズがあるんです。それは観覧車が復活する時のお楽しみ」。来園客を喜ばせる努力と工夫に、終わりはない。

© 株式会社神戸新聞社