市民病院で医師の退職相次ぎ、患者数も激減 補助金切れると赤字転落危機も

【資料写真】市立大津市民病院

 2020年1月に初当選した大津市の佐藤健司市長(50)の任期満了まで、あと半年を切った。来年1月14日告示、21日投開票の次期市長選には、現時点で元滋賀県議の成田政隆氏(48)が立候補する意向を表明しており、佐藤市長はまだ2期目への挑戦を明言していない。佐藤市政の3年半の取り組みを振り返った。

 市立大津市民病院では昨年3月~今年3月、外科や脳神経外科など4診療科の医師計22人が、前理事長との運営方針を巡る対立から次々と退職した。一部の救急搬送の受け入れを断る事態が起きた。

 同病院は、前市政の17年に地方独立行政法人化した。多額の累積欠損金を抱えて資金繰りは厳しく、佐藤氏は市長就任直後に約33億円を市単費で支出して欠損金の穴埋めを表明。病院の安定運営に積極的に関わる姿勢を、当初から打ち出していた。

 医師の大量退職を受け、佐藤氏は大阪医科薬科大や滋賀医科大、京都府立医科大に足を運び、医師派遣を要請した。これまでに常勤医師12人を確保でき、病院職員の一人は「市長が人脈や影響力を生かして動いてくれた成果だ」とみる。佐藤氏自身も、今年3月の定例市長会見で22年度で最も心に残った出来事に医師大量退職を挙げ、「病院運営の立て直しと市民の信頼回復に力を尽くしてきた」と振り返った。

 非常勤の医師も増員したことで、現時点では診療態勢に問題はないというが、一連の問題に不安を感じた市民の受診控えなどで、22年度の入院患者数(延べ10万724人)は、21年度より約7500人減った。20年度に策定した入院患者の計画値を2万人以上も下回っている。それでも22年度決算の当期損益が8億6700万円の黒字になったのは、国のコロナ関連補助金が18億円以上にのぼったからだ。

 同病院は、現在もコロナ病床を20床用意し、本年度は約5億円の補助金収入を見込む。だが補助金は9月末で終了する予定で、その後は赤字に転落する可能性があるという。患者の獲得に向け、初診日から最短10日でがんの手術ができる仕組みを導入したり、女性患者に特化した「女性外科外来」「女性泌尿器科外来」を開設したりしているが、「患者数回復への前途は厳しい」(市地域医療政策課)のが実情だ。

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