女子ケイリン・室谷(青森商2年)優勝 全国高校総体 強豪選手を差し切る

【自転車女子ケイリン決勝】仕掛けのタイミングを計る青森商の室谷①。狙い通りのレース展開で優勝した=函館競輪場

 全国高校総合体育大会(インターハイ)の自転車競技が9日、北海道函館市の函館競輪場で行われ、女子ケイリンで室谷榎音(かのん)=青森商2年=が優勝した。県勢が同競技で頂点に立つのは、2009年男子オリンピックスプリントの八戸工(坂本、木村、磯島)以来14年ぶり。個人種目では06年男子ポイントレースの奥崎心吾(青森山田)以来17年ぶりの快挙。

 序盤から落ち着いてレースを展開。実績のある強豪選手が先に抜け出したが食らいつき、ゴール直前で差し切った。室谷は「絶対1位を取りたかったので、すごくうれしい」と声を弾ませた。

 自転車の女子競技は2018年から正式種目となった。

▼強敵撃破「最高です」

 自転車女子ケイリン最後の直線100メートル。終盤まで体力を温存した室谷(青森商)が、一気のラストスパートで北岡(石川・内灘)を差し切った。強敵との一騎打ちを制して栄冠を手にし、「すっごいうれしい。最高です」と破顔した。

 数々の大会で優勝し、「高校女子では圧倒的な存在」(室谷)という北岡を徹底的にマークした。「最後の最後まで後ろについていようと思った」と、残り1周半で前に出たライバルの背後にピタリとつき、好機をうかがった。

 そして勝負の直線。声援が聞こえなくなるほどの集中力でペダルを踏み込むとぐんぐん加速し、わずかに先着。「最後、差せるのかすごく不安だったけど、こうなったらいいな、という理想通りの展開だった」と熱戦を振り返った。

 身長156センチと競技では小柄な方だが、体格差を豊富な練習量で補った。部活では毎日60キロを自転車で走り、自宅と学校の往復20キロも競技用の自転車で通った。昨年は準決勝敗退だった悔しさをばねに鍛錬に励み、「持久力や瞬発力が増し、全体的に強くなった」。自信を深め臨んだ大会で雪辱を果たした。

 父・智さん(46)の背中を追うように、青森商自転車競技部に入部。その父は今大会に役員として携わった。まな娘のレースを間近で見守った智さんは「めちゃめちゃ緊張しながら見ていた。ただただうれしい」と目を潤ませた。

 まだ2年生で、今後の活躍に期待がかかる室谷は「来年のインターハイも優勝できるように頑張りたい」。函館の青空に、天真らんまんなヒロインの笑顔が映えた。

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