小さいときから人前で表現する何かをやりたくて、十代のときはもうその道で行こうって思ってましたね
──小さい頃はどういう子どもでした?
Meari:結構目立ちたがり屋だったと思います。なりきるのが好きだったので、セーラームーンの衣装を着てポーズをとったり。あと、小学校でも、ホームルームの時間に友達といちから考えた寸劇をクラスのみんなに見てもらうっていうのをしょっちゅうやってました(笑)。学級委員とか生徒会もやっていて、友達はいっぱいいましたね。
──習い事はされてました?
Meari:中学のときからジャズダンスをしていました。あとボイストレーニングとか、地域の合唱もやっていました。
──家の中では、やっぱりずっと音楽がかかっていました?
Meari:母がずーっとかけていたのを母と一緒にマネして歌ったりしてましたね。ジャクソン5とか、カーペンターズとか、マドンナ。あと、『エド・サリヴァン・ショー』のシリーズが全部ビデオで揃ってて、それをずっとかけて観てました。
──芸能活動はいつからされてるんですか?
Meari:高校時代からモデルのお仕事と、バラエティーとか音楽番組のバックダンスの仕事をやっていました。
──自分からやりたいって言って始めたんですか?
Meari:そうですね。小さいときから人前で表現する何かをやりたいなってずっと思ってたので、十代のときはもうその道で行こうって思ってましたね。
──音楽活動は並行してやってるんですか?
Meari:歌はずっと歌ってきたんですけど。エンターテインメントの中で仕事している途中で自分でも「作ってみたいな」っていう気持ちが湧いてきて、初めにGarageBandを使ってやり始めた感じです。
──ご両親のライブは観に行かれてました?
Meari:父が東京でやるときは毎回観に行ってましたね。小学校ぐらいから。
──お父さんのステージを観てどう思ってました?
Meari:カッコイイなって思ってました(笑)。幼いながらも「あの音を浴びたいな」っていう気持ちで毎回観に行ってたと思います。
──でも、バンドやりたいとはならなかったんですね。
Meari:やりたいって思ってたんですけどね。やっぱり私は父や母の影響で70年代とかの音楽に触れていましたけど、周りにはバンド演ったりそういう話をできる友達がいなくて。ただ自分の中では、やるんだったら「バンドってこうだよな」みたいなイメージはずっとあったので、やっとそれが今消化できてるのが嬉しいなって思います。
──お母さんのステージは生で観てました?
Meari:観てました。やっぱり母はシンガーなんで、孤独だなって思っていました。ステージが戦いなんですよ。バンドともまた違うものを観てました。
──自分がステージに立つときの立ち振る舞いはもう、子どもの頃からご両親を見て学んできていますよね。
Meari:そうですね。学びました。
──芸能活動して学校行って、っていう中で曲を作ることって自分の中でどういう位置付けだったんですか?
Meari:発散に近いかもしれない。「これいい」って思うメロディとか、音色にはこだわりがあったと思うので、GarageBandとか触ってみて作ったループにボーカル乗せてみるような、遊びみたいな感覚でやってました。
──ギターはいつ頃から?
Meari:ギターは、xiexie始めてからです(笑)。
──そうなんですか? じゃあ、ずっとひたすらGarageBandで作って溜めてたんですか?
Meari:そんな多くはないんですけど。飛田さんと出会ったときに聴いてもらってみたいな感じです。
──中国でタレント活動をされていたんですよね。
Meari:大学のときに、チャン・ツィイー主演の中国映画『初恋のきた道』を観て、思い立って上海に一人旅に行って、そこからです。中国ではミュージカルのような舞台に出させてもらったりとか、ライブも上海で1回ソロでやりました。
私のことを良いって言ってくれる人がやっと現れた!!(笑)
──xiexieの結成の経緯を詳しく教えてください。
飛田:やっぱりMeariさんと会ったから組んだっていうのが大きいんですけど。出会いは、共通の友人がいるヨガ教室で(笑)。
──ヨガ?(笑)
Meari:その共通の友人はピラティスのインストラクターで。朝活ヨガパーティーっていう、普段なら絶対行かないような(笑)。そこで、その人が「なんか2人、音楽性合うんじゃない?」って突然(笑)。
飛田:それでFacebookを交換したんです。それが2018年。僕は個人的にトラックメイキングをしてまして(RENGE)。もともとエレクトロ系でハウスミュージックを作っていこうっていう個人的な夢があったのですが、ボーカリストは常にフューチャリングで考えていたこともあって、その時期たくさんボーカリストに声をかけていたんです。そんな流れの中でMeariちゃんのFacebookでm-floの曲を歌っているのを見たところ、これは楽曲を語る力があるいい声だなって。これは素材にもなる声だって思いましたね。
──じゃあ、先にRENGEの方で歌ってからxiexieに。
飛田:そうです。子どもの頃から最上級のロック畑のカルチャーを知ってるのは大きいし、Meariちゃんはバンドをやりたいっていう感じで、とにかくもがいてたんですよね。自分を表現したいんだっていうパワーだけは伝わってきたんで、こういう人とだったらバンドを組みたいって思いました。
──声をかけられてどうでした?
Meari:私のことを良いって言ってくれる人がやっと現れた!! と(笑)。それまで結構自信失くすことが多かったんです。オーディションもたくさん受けてきたんですけど、「何も感じない」とか言われたことも結構あって。あと、飛田さんの演っていたall about paradiseは私もとても好みなバンドなので。「ぜひぜひ、一緒にやろう」ってお返事しました。
──曲は最初から今みたいな感じでやろうって思ってたんですか?
飛田:xiexieはもうブレてなくて。いわゆるUSインディーみたいな音楽を日本でやってるバンドいないなって思って、そういう意味では最初からそうですね。
──幸田さんとはNY&BICYCLES(読み:ニューヨークと自転車・通称:ニューチャリ)で一緒にやられていたわけですけど、また一緒にやろうってなったのはどういう流れでですか?
飛田:ニューチャリっていうバンドは、人間関係の問題があって音楽辞めるっていうよりかは、ボーカリスト(幸田)が自分の歌に挫折していって、「ちょっと音楽離れようかなって思う」ってなってるところで、「もったいないな、音楽の能力高いのに」っていうのが僕の中にあって。ずっと「諦めちゃダメだよ」ってメッセージを送っていたんです。それで、「こういうボーカリスト(Meari)と出会ったんで、やってください」みたいな、もう選択なしに(笑)。ベースの開君とは、あの人、スターバックスの店長だったんですけど。
Meari:しかも渋谷のTSUTAYAの中の。
──相当デキる方じゃないですか。
飛田:ニューチャリ時代に対バンしたことがあるんです。てるち(開)とは、僕のドラムはすごい合うだろうなっていう。黒っぽさもありながらガレージ感も持ってる。その中立感はとても心地いいだろうなと思って、「一緒にやりたいな」と思ってたら、たまたまスタバで「あれ? てるち(開)がいる」って(笑)。
──すごい(笑)。
飛田:次回行ったら誘おうって思って。コーヒー頼むときに「あらっ! バンドやりましょう!」って(笑)。だからMeariちゃんとやるってなったときに、幸田くんとてるち(開)はすぐ浮かんだ2人かな。人間性の部分や、相性の良さとかいろいろ考えて。
──実際集まってやってみてどうでした?
飛田:最初はあんまり目標を定めるというよりかは、「自分の人生を豊かにするためにバンドを4人で続けていこうね」みたいな感じで始めていったんですけど、音を出したときに、ボーカリストを今までやってた幸田くんがギタリストになって。結構アバンギャルドなギターを弾くんですけど、フロントマンをやってきたからこその図々しさみたいなものがよく出るんですよね。それがバンドっぽさになるし、Meariちゃんも親御さんのシナロケですごいバンドを見てきてるから、それも全然自然だったと思うんですよね。だから、「これは、なんかいいかも」って僕自身エンジンかかってきた感じですね。それですぐレコーディング始めました。
──Meariさんは実際やってみてどうでした?
Meari:「da da」っていう曲を歌ってみた自分の声を聴いて、今までで一番自分らしいかもなって思ったし、自分史上一番カッコイイって思ったんですよ(笑)。
──もうお芝居とかではなく、バンドでいこうと?
Meari:お芝居好きなんですけど、苦手意識があって(笑)。それよりも、バンドが楽しいです。最初の頃は、自分の中のバンドのボーカル像になりきってたんですけど、最近は自然体になりました。今はお客さんの顔とかも見えたりして、リアルなコミュニケーションを心がけてます。
実は、バンドの裏コンセプトは、“SF”なんですよ
──xiexieの曲のジャンルの名称としては“インディー”って言葉がつくと思うんですけど、全然インディーの人たちじゃないと思っていて。例えば「sea bird」とか、すごいメジャー感がある曲だし、Meariさんがいることでバンド全体がキャッチーになっていますよね。そういう部分も見据えて誘ったんですか?
飛田:そうですね。絶対的ポップ感みたいなのはあるなって思います。やっぱりただのアンダーグラウンドで終わりたくなかったし。こういうバンドが日本にいますよっていう。
──xiexieの曲って基本すごく心地良いんですけど、一瞬危うさを感じるんです。例えば、田舎の綺麗な景色の中の入っちゃいけない森とか、一瞬次元がズレて迷い込んじゃって、戻ってくるみたいな。ギターのサイケデリックな感じとか、リズムをわざとずらしてもたってるところとか、不協和音みたいなのが、歌詞と合ってすごく効いていて。音数が少ないから余白がある分、イメージが湧く。曲は基本的に幸田さんが多いんですか?
飛田:コード進行は幸田くんが作ってきますね。
Meari:メロディと歌詞は、やまちゃん(幸田)が作ってきたものをアレンジしてます。
飛田:面白いのが、幸田くんって、こういうアレンジでこういう曲にしたいっていうのを言わないんですよ。バッ、て30分くらいギター弾いたら「適当にやっといて」って。「じゃあ、俺好きにやっちゃうよ?」って、僕がエフェクターかかってないところをかけても、何にも言ってこないし。だからライブが大変なんですよ(笑)。本人が「どのフレーズだったっけ?」って。「この4人が感じる着地でいいよ」、「みんなでやろうよ」っていう彼の余裕っていうか。もちろん、てるちもベースラインは自分で考えてるし、「ここのアレンジこうしようよ」って口出ししてくれるし、誰かが独裁しているというよりかは、「みんなが楽しいと思わなきゃダメだよね」みたいな。僕らも今まで何度も失敗してきてるんで、僕とやまちゃん(幸田)のこれまでの続きでもあるんですよね。だから、ニューチャリ時代はケンカが多かったんですけど。
──ああ、そうなんですね。
飛田:xiexieはひとつもケンカしなかったりするのも、長くやってるからだし。そういう部分では、みんながみんな関わっています。だから今回の新曲の「Green / FILM_SONG.」に関しては、ほぼMeariちゃんがメロディ全部書いてるし。曲によってその人の才能を引き出していこうよっていう柔軟な。
──Meariさんが作った曲はありますか?
Meari:1曲あったんですけど、やらなくなった(一同笑)。ライブで1回やったけど。いや、私はめっちゃカッコイイと思ってんだけどね。まだ未熟なんで。
──歌詞と曲がすごく合ってると思うんですけど、事前に曲のテーマとか共有されているんですか?
飛田:実は、バンドの裏コンセプトは、“SF”なんですよ。
Meari:もうそこだよね。やまちゃん(幸田)の好きなものもなんとなく分かってきたので、こういうことだよねって。私も、やまちゃんの音ありきでイメージが湧いてくる。
──もともとSFっていうテーマが全員の共通認識としてあるわけですね。納得です。
飛田:やまちゃんは一貫してるので。前のバンドから基本的には「こういうアルバムがやりたいよね」って言っても、なかなか若いときはそれが実現できなくて。それがなんとなくxiexieで実現できてるのかなって思います。
──例えば「alien」とか「walking man」の歌詞って、すごい切ないじゃないですか。疎外感、異物感みたいな。そういう気持ちってMeariさん自身も感じているんですか?
Meari:う〜ん…あんまない(一同笑)。これは大和(幸田)くんが書いてきた。
──そうなんですか!? てっきりMeariさんかと。その2曲もそうですが、xiexieの楽曲全体の要になっているのは、実は幸田さんの世界観なんですね。
飛田:「いやいや、いるじゃ〜ん、こんな長くやってる友達が」みたいなのはあったんですけど。
私たちの夏フェスはSHELTERなんです(笑)
──お二人ともいろんな経験を経てきて、今xiexieやっててどうですか? 手応えありますか?
飛田:手応えというのはあるし、自分が人間として成長できてるって感じられるところが面白い場だなと思っています。ビジネス的な部分だけを着地にしてしまうと、あまりにももったいないぐらいバンドってね、素敵なものが多いので。そういう意味では、開くんに教わることが多くて。一挙手一投足そういう部分がバンドで学べて、それが結構音に出るんですよね。それを吐き出せるっていうのが、なんか面白いコンテンツだなって思います。
Meari:楽しいんですけど、人と比べたりすることもやっぱり増えてて、今のこの時期(笑)。どうしたらもっとライブ楽しんでもらえるのかなとか。自分らしさってなんだろう? っていうところと向き合ってます。
──今後の活動は?
Meari:今は、次のアルバムを作っているので、ライブを少なめにして、そっちに集中し始めてるところです。
──海外でも活動したいですよね。
Meari:かなり行きたいですね。歌詞は日本語なんですけど、台湾とか、タイとか、UK、USのリスナーもいるので、そういうところに行ってライブやりたいです。
──海外も視野に入れた“宇宙戦隊シエシエ”の必殺技はなんですか?
Meari:ヤバっ(笑)。目からビーム。
──いいですね(笑)。最後に、8月11日のライブに向けて一言ずつお願いします。
飛田:ニューチャリ時代もSHELTERでワンマンをやらしてもらったんですけど、ロックバンドの登竜門みたいな、それぐらいSHELTERって僕の中で大きいので、その気合が出せればなと。目からビーム出せればなと(笑)。
Meari:私たちの夏フェスはSHELTERなんです(笑)。2023年の夏は、SHELTERで爆発できるようにしたいと思います。
artist photograph:takumi gunji / yuka yamaguchi / 元(天国) live photograph:manami fukuda