KNT-CTHD、過大請求など不正再発防止へ「人(社員意識)・組織(機能)・業務」を改革

KNT-CTホールディングス(HD)は8月9日、連結子会社である近畿日本ツーリスト(KNT)による「新型コロナウイルスワクチン接種に係る業務」に係る過大請求などの全容解明に向けた同社独立社外取締役や外部の専門家からなる調査委員会からの調査報告書を発表した。また、再発防止策の策定方針として①人(社員意識)②組織(機能)③業務-の3つの改革策を示した。

調査結果は次の通り。

調査委員会により指摘された原因項目

a.利益追求への強い指向の中で、各人の行為の妥当性及び適法性に対する意識が希薄化していたこと
(a) 会社としての利益最優先の方針とその下部組織への浸透
(b) KNTの組織内に広範に見られるコンプライアンス軽視の姿勢
b.適切な業務遂行を担保するための管理態勢が極めて脆弱であったこと
(a) 法務機能の不全
(b) コンプライアンスを一元的に管理するための体制の不備
(c) 内部的な牽制機能の不全
(d) 経営陣による監督機能の不全
(e) 内部監査機能(第 3 線)の不全
c.社内組織の各階層間における正確な意思疎通の欠如と現場の問題を躊躇なく経営陣に進言する風土が醸成されていなかったこと
(a) 上層部から実務担当者に対する目的意識の伝達の不備
(b) 実務担当者から上層部に対する進言が躊躇なくなされる状況が形成されていなかったこと
(c) 背景となる現場裁量型の業務遂行方法
(d) 各特徴の相互作用

調査委員会により提言された再発防止策の項目

a.コンプライアンスを基軸とした、各階層の活力を生み出す経営方針及び人事評価制度の策定
(a) 経営陣によるコンプライアンスへのコミットメント
(b) 全社的なコンプライアンス意識の涵養と各階層の活力を生み出す経営方針の策定
(c) 人事評価制度の見直し
b.法務・コンプライアンスに特化した部署の設置と当該部署の権限の明確化及び各経営人材の監督機能の強化
(a) 法務・コンプライアンスに特化した部署の設置と当該部署の権限の明確化
(b) 各経営人材の監督機能の強化
c.策定した経営方針の実施状況を確認する体制の構築並びに階層を超えた円滑な意思疎通の実行及びコンプライアンスに特化したレポートラインの確立
(a) 策定した経営方針の実施状況を確認する体制の構築
(b) 既存事業における役割分担・責任の所在の見直し及び統一的・横断的な業務管理
(c) 証憑類の必要性・保管ルール明確化及び検証可能性の確保
(d) コンプライアンス上の問題となり得る情報が正確・迅速に経営陣に伝達される仕組みの構築
(e) 内部監査部門の強化と社内での地位向上

再発防止策の策定方針

1.コンプライアンス委員会およびコンプライアンス改革本部の設置(2023 年6月 26 日)

社長を委員長とし、社外取締役藤田清文弁護士を委員とするコンプライアンス強化に特化した「コンプライアンス委員会」と、同委員会事務局として専属の担当者3人を含む「コンプライアス改革本部」を新たに設置。グループの企業風土の改革およびコンプライアンスの継続的な強化を図る。

2.法令倫理管理センターの設置(2023 年 7 月 1 日)

主要な子会社である近畿日本ツーリストおよびクラブツーリズムに「法令倫理管理センター」を設置。今後、同センターは、KNT-CTHDと連携してコンプライアンス推進活動を実施するほか、適切な契約書作成サポート、内部通報の窓口となるなど、コンプライアンス体制の実効性確保と事前防止機能の強化に努める。

3.コンプライアンスに関する業務改革

法令を遵守する営業体制・仕組みの再設計に当たり、各種ガイドラインや手続きの厳格化を図るとともに、IT システムを活用した契約内容の確認の仕組みづくりに向け、具体的協議を進めている。

4.コーポレートガバナンスに関する改革

契約に関する社員への再教育を徹底するとともに、企業風土改革に向け、KNT-CTグループ全社員(約 4,800 人)を対象とした意識調査を実施し、その結果を踏まえ、経営層も含めたタウンホールミーティング、職場ワークショップ等の開催により、自由闊達な議論とコミュニケーションがなされる風通しのよい職場環境の整備を進める。また、予算や目標設定に関するマネジメントコントロールの改革や経営管理機能をKNT-CTHDに集約することで、不正を発生させない組織構造改革を進める。

5.社員の意識改革の徹底と倫理観の醸成

誠実で正しい事業活動から決して外れないという行動哲学の確立を目的とする、社長以下全スタッフの「学び」の実践に向けた検

企業風土改革の取組み方針

KNT-CTHDは、【人(社員意識)の改革】【組織(機能)の改革】【業務の改革】を包括的に実行し、企業風土改革の取り組みを行う。

(1)信頼回復のための課題認識

① KNT-CT グループは「不正が起こらない会社」と社会から認められる組織になる必要がある。
② 新たな不正を生まないためには、社員意識の改革が最も重要であり、あわせて組織(機能)の改革・業務の改革にも取組む。
③ KNT-CT グループが事業を通じて社会的な責任を果たしていくためには、適切な判断力を有する社員の確保と育成が必須。
④ 改革が「反省」にとどまらず、社員に KNT ー CT グループ再生への方向性を具体的に示し、改革への期待感を醸成していく。

(2)取り組みにおける問題意識

① 不正を行った社員・箇所の発生要因(意識・行動原理)を徹底的に解き明かす。
② 人間学教育の定着(社員が、人として、社会人として道徳性・正しい習性に基づく行動をとるために、意識改革の取組みが必要)
③ KNT に限定せず、グループ全体の問題として取組む。(グループの一体化)
④ HD も含め、経営陣の意識改革も必要である。

KNT-CTHD 調査報告書(開示版):

KNT-CTHDの再発防止策の策定方針

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