社説:日大の不祥事 対応遅れ、反省し検証を

 信頼回復に向けて改革に取り組んできた日本大が、またも不祥事に直面している。

 アメリカンフットボール部の学生寮で乾燥大麻などが見つかり、部員が警視庁に逮捕された。林真理子理事長らが記者会見を開き、「大変に遺憾」と謝罪した。

 重大な情報が理事長ら大学トップに届かず、対応が後手に回った感が強い。元理事長のワンマン体制からの脱却を図った日大だが、改めてガバナンス(組織統治)を問われる事態と言えよう。

 日大アメフト部は2018年に「危険タックル」問題で批判を浴びた。体制を一新して再起を誓っていたのに、一部部員の行為とはいえ残念と言うほかない。

 東京農業大ボクシング部員らが先月、営利目的で乾燥大麻を所持したとして逮捕されるなど、若者への大麻の広がりは深刻だ。友達の誘いや興味本位で軽い気持ちで手を出したのかもしれないが、より強い副作用や依存性の高い薬物へと深みにはまりやすい。

 逮捕されたアメフト部員は覚醒剤成分を含む錠剤も隠していた。「大麻を買った際にもらった」と供述しており、薬物汚染の実態が改めて浮き彫りになった。

 大麻入手の経緯に加え、他の部員にも広がっていなかったのか、全容解明を急いでほしい。

 気がかりなのは大学の対応だ。

 日大によると、昨年10月に保護者から情報が寄せられ、部員からも「大麻のようなものを吸った」と申告があったが、警察署に届けなかった。警視庁からも大麻使用を疑う情報が提供されたという。

 今年6月に再び警察から連絡を受けた大学側が寮内を調べ、小さなポリ袋に入った不審物を見つけた。だが、12日間も警察に通報していなかったのはなぜだろう。

 日大は「自首させるのが大学の責務だと考えた」「隠蔽(いんぺい)とは一切思ってない」と説明するが、適切な対応だったとは言い難い。

 日大再生を託されて昨年7月、卒業生で作家の林理事長が就任したが、違法薬物の情報はすぐには共有されなかったとみられる。いまだ改革は道半ばと言える。真摯(しんし)に反省し、再発を防いでもらいたい。

 折しも、先の国会で私立大学などのガバナンスを強化する改正私立学校法が成立した。日大など私学で相次いだ不祥事を防ぐのが狙いだ。各学校法人とも他山の石として、閉鎖的になりがちな組織に一般社会の常識を持ち込み、運営の適正化や透明化を進める必要がある。

© 株式会社京都新聞社