そろそろ七夕のひこ星から返信がある頃だ…40年前に送信、宇宙人からメッセージ受信計画 兵庫県立大とJAXA

40年前に故森本雅樹さんらがアルタイルに発信したイラスト。「アルタイル星人から返信があるなら、同じように進化の過程を教えてくれるのでは」と話す鳴沢真也さん=神戸市西区学園西町8、兵庫県立大

 宇宙のどこかに地球外生命体は存在している-。期待を胸に1983年夏、七夕のひこ星「わし座のアルタイル」に向け、後に兵庫県立大西はりま天文台(佐用町)の名誉顧問となる天文学者、森本雅樹さん=2010年死去=らがメッセージを送った。40年がたった今年、「アルタイルに生命体がいたらそろそろ返事がある頃だ」と、県立大と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が連携し、返信を受け取る計画を進めている。

 メッセージは週刊少年ジャンプ(集英社)が「子どもたちに夢を」と企画し、旧暦の七夕の8月15日、イラスト13枚と子どもたちの声を米国スタンフォード大のアンテナから電波で発信した。

 アルタイル星人がいたとしても、互いに言葉も表現の形式も分からない。そこで当時、東大東京天文台(現国立天文台)に所属していた森本さんと平林久さんが、地球人を理解してもらいやすいようイラストで表現した。

 数学や物理の法則、DNAの構造、原始生物から人間に至る生物の進化などを図解。最後の1枚は、酒が好きな2人らしくアルコールの化学式と「TOAST(乾盃)」の文字で出会いを祝福した。

 日本人が地球外の知的生命に向けてメッセージを送ったのは、この時が初めてだったという。

 アルタイルと太陽系の距離は約16.7光年。83年に地球から放たれた電波は2000年ごろに到着していることになる。アルタイル星人がいるとすれば、最速で17年ごろに返信が届く。電波望遠鏡があれば受信できるが、森本さんが10年に亡くなったこともあり実施していなかった。

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 「他の星からメッセージが届いたら、アルタイル側は大騒ぎ。国際会議にかけ、さまざまな決裁を得てから返信するでしょう。数年のタイムラグがあってもおかしくない」

 うなずいてみせるのは、県立大自然・環境科学研究所の理学博士鳴沢真也さん(58)だ。地球外知的生命体の探査では日本唯一の専門家で、今春まで西はりま天文台に勤務し、森本さんとも交流があった。

 鳴沢さんはJAXAに協力を依頼。アルタイルからの返信をキャッチするプロジェクトを立ち上げ、今月22日、JAXA・臼田宇宙空間観測所(長野県)で観測することに決めた。この日はかつて地球から発信した日と同じ、旧暦の七夕に当たる。

 「アルタイルに知的生命がいる確率は高くないが、0%でもない」と鳴沢さん。22日の結果にかかわらず、他の研究機関にも呼びかけて観測を続ける方針といい「交流が実現したら、地球に生きる者同士も平和や命の大切さなどあるべき姿を考え直すようになるのでは」。未知の異星人からの連絡を心待ちにしている。(勝浦美香)

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