実は3人のジェラードン「コンビだと初対面のピン芸人みたい」

コント番組の常連で、マヂカルラブリーやすゑひろがりず、囲碁将棋など、近年特に注目を集める面々とともにユニット「大宮セブン」に名前を連ね、劇場でも活躍。さらにコントだけをストイックにアップし続けるYouTubeの登録者数は驚異の120万人と、多方面で活躍するジェラードン」

ジェラードンのアタック西本(左)とかみちぃ (7月25日・大阪市内)

ツッコミの海野裕二の療養によって、2021年12月より実質的なコンビ活動を続けるアタック西本とかみちぃの2人に、ボケ同士でコントや平場をこなす難しさや、それぞれ高い演技力で個性的なキャラを演じ続けるお互いへの思いなどを訊いた」

■ 「コンビだと初めて会うピン芸人みたい」(西本)

──2人での活動はもう慣れましたか?

かみちぃ「だいぶ慣れましたね。最初はボケ2人で新しいんじゃないかと思っていたんですが、ネタでもロケでもツッコミがいないと終わりがこないというか。「ここで終わりですよ」ってちゃんと見せないと収集がつかないので、僕がツッコむようになりました。16年目にして初めてツッコミに挑戦するという」

──西本さんではなくなぜかみちぃさんがツッコミを?

西本「かみちぃは真人間なので。なんなら3人のなかで一番まともです」

かみちぃ「でも素を出すことがめっちゃ苦手で、コントでキャラに入っていない状態でどういればいいのか自分でもよく分かってない。ロケではロケのスイッチが入るんですが、楽屋で全然喋んない僕を西本はずっと見ているので、ロケのときにカメラが回って急にスイッチを入れたら西本がすごく絡み辛そうにしてる。「初めて会うピン芸人みたいで難いのよ」って言われて」

西本「こんなに長いこと一緒にいるのに、ロケめっちゃやり辛い。いつも違うキャラが入っていて、スタジオで座ってやりとりする番組でもまた違うやつになっていたり。あれ? 前と違う人間が横にいる、という。『俺は常に人間が変わるという悩みを抱えてて、それに困惑するだろう、なんとかやってくれよ』っていう言い分だそうです」

──トリオから「コンビ」に変わって、まだまだ現在進行形でいろんな困難と向き合っているんですね。

かみちぃ「3人だと意見が分かれたときに絶対2対1になるじゃないですか。そうなったら、すぐに、じゃあ2の方でいこう、ってなる。これが1対1になると話がすぐに進まないので、会話が常に『直』というか。これが小っ恥ずかしいんです。僕はコンビを10回くらい解散し続けて、トリオになったらこんなに続いてるという状態なので、2人が苦手なのかもしれないですね。西本ともイチから2人は無理だったかもしれない」

「発想はダントツで西本がおもしろい」とかみちぃ (7月25日・大阪市内)

──突然コンビになって、お2人はお互いをどう見ているんですか?

かみちぃ「トリオのときからそうですけど、発想はダントツで西本がおもしろい。トリオでは僕がまず出ていって場を慣らしてから西本が出てくるパターンが多いんですが、西本が出てくるときは僕もワクワクしますよ。僕で笑ってもらえるように頑張ってもいるんですが、いやいやお客さん違いますよ、この後出てきますから、っていう」

西本「ありがとう(笑)。かみちぃはどんなキャラでもいける貴重な存在ですね。俺これやりたいんだけど、それに合う相手いける? って聞いたら大体いける特殊能力がある。特に女性役は「あれ? 本当に女の人なのかな?」って思うくらい。どのキャラも全部同じ一定でもいいのに、所作とか、めっちゃちっちゃい声で喋る女の人になったり。観てる人はいいかもしれませんが、対面してる僕は『何だこの感情、気持ち悪いな』ってなる。それ以上やると、本当の女になるよ」

■ 「YouTubeコントは現象」(西本)

ジェラードンのアタック西本(左)とかみちぃ (7月25日・大阪市内)

──2人の特長的なキャラクターが独特の間で自然なやりとりを続けるYouTubeのコントは、どうやって作ってるんですか?

西本「台本はないです。こういってこういってという骨組みを作って、一度流しでやって本番を撮る。YouTubeのコントは基本的にボケはないんですよ。普通の会話というか『現象』というか」

かみちぃ「YouTubeはサムネがおもしろければ伸びるってことが分かったので、サムネの文章重視。正直、撮っててあんまりおもしろくないなと思ってても、サムネがおもしろかったら伸びることがあって。元々は2万再生とか3万再生だったのが、サムネを変えたら急に10万超えたりして、最初はびっくりしました」

西本「YouTubeも、今は週に3本のコントをアップしているんですが、本当は僕は週2にしたいんです。かみちぃと2人の作家は週3派なんですが」

かみちぃ「これに関しては僕と作家が振り回されてます。一時期西本が、『俺はYouTubeだけで食っていきたい』って言い出して。実は僕ら2人になったときに、どうせ仕事こないだろうとYouTubeに力を入れ始めたんです。そうしたら、ありがたいことにたくさん仕事をいただくようになって、めっちゃしんどくなってきたという」

西本「収益と登録者数のことを考えたら週3がいいのかもしれないです。でも僕としては 、撮らないといけないから、納得いってないけど撮る、という状況がマイナスになってるんじゃないかなと思って。今いただいてる仕事をこなしつつ面白いと思えるものを出す。それが週2」

かみちぃ「週2でも週3でも大変は大変だと思います。もっと僕らが忙しくなったら週3はきつくなるかもしれませんが、一気に減らすと見てくれている人が一気に離れちゃうんじゃないかなぁ」

■ 「KOC優勝したら角刈りもやめる」(西本)

「KOC優勝したら気持ち的にゴールするだろうな」と話すアタック西本(左)とかみちぃ (7月25日・大阪市内)

──劇場とテレビとYouTube、現在はどれくらいの割合で毎日過ごされているんですか?

西本「劇場が一番多くて5割くらいですね。テレビよりYouTubeの方が考えてる時間は多いのかな。YouTubeが3のテレビが2、くらい」

かみちぃ「僕はテレビに憧れて芸人になったので、テレビはもっと出たいですね。YouTubeは自分たちを好きな人が見にきてくれるので、その人たちの目にしか触れないですけど、テレビはみんなが見るじゃないですか」

──今年はキングオブコントにもエントリーされているとか?

かみちぃ「去年はエントリーするかどうかのタイミングで海野が一瞬だけ復帰したので、海野帰ってきたんだったらネタもないし出るのやめとこうか、って感じで。でもすぐまた休養したので、出たら良かったな、って話してたくらい」

西本「でもネタの候補が少ないんですよ。単独もやって増やしてるんですが、何も仕上がってない。仕上がってない状態で遊び感覚で出ようとして、周りのコント師にしてみたら失礼な奴かもしれないですよ」

──やはりキングオブコントには情熱があるんですか?

西本「もちろんです。KOC優勝したら気持ち的にゴールするだろうな、と思ってます。やっぱり頂点ですから」

かみちぃ「優勝したらもっとコント楽しくなるだろうな、と思います。賞レースに勝つことを考えずに自由にネタを作って。抜け出したいって感じですね」

西本「僕も早く抜け出したいですよ。優勝したら角刈りやめようかなとか思ってますから。体も鍛えて、全然違う人間になろうかと」

「優勝したら角刈りやめようかな」と話すアタック西本(左)とかみちぃ (7月25日・大阪市内)

──イケメン時代の姿に戻るんですか?

西本「そうではないですけど、見た目でウケるためだけにずっとこの状態なんで、全く違う人間になりたい。髪の毛切りに行かなきゃとかもめっちゃめんどくさいんですよ。伸びてきてるのに仕事あるから行けないじゃん、とか。きれいに保たないといけないというプレッシャーから逃れたい」

──では、早ければ今年のキングオブコント後に全く違う姿の西本さんが見られるかも、ということで。

西本「かもしれないですね。角刈りチャレンジのこれもいらなくなるかもしれない」

角刈り通り抜けチャレンジのネタで使われる段ボール(7月25日・大阪市内)


彼らは、「COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール」(大阪市中央区)でおこなわれる笑いの祭典『真夏のラフフェスin森ノ宮2023』に参加(8月9日〜15日)。12日の『夏休み!よしもとお笑いライブ』などに出演する。詳細は公式サイトにて。

取材・文・写真/上地智

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