アジア勢は5人 新装プレーオフシリーズで生き残るのは

10年連続の最終戦進出を狙う松山英樹(Getty Images)

プレーオフシリーズに突入した2022―23年シーズン。初戦の「フェデックスセントジュード選手権」を前にPGAツアーのChuah Choo Chiang氏がオリジナルコラムでアジア勢の活躍について言及した。

フェデックスカップがPGAツアーにおいていかに究極のものであるかを示す数字がある。2007年に始まった年間ポイントレース。参加した選手は過去16シーズンで2709人に上り、そのうち輝くトロフィを手にしたのはわずか13人しかいない。

勝率は0.48%。しかしそれで得られる賞金は1800万ドル(約25億9000万円)と超高額。獲得までにはシーズンを通して安定したパフォーマンスが求められ、今週の「フェデックスセントジュード選手権」で始まる全3戦のプレーオフシリーズ中にピークを迎えることが求められる。

アジア勢はまだこのフェデックス王者に輝いたことがない。ことしは韓国のカルテット、トム・キム(ポイントランク14位)、キム・シウー(18位)、イム・ソンジェ(32位)、アン・ビョンフン(37位)、そして日本のスター松山英樹(57位)の5人のアジア出身選手がメンフィスのTPCサウスウィンドでティアップする。

アン・ビョンフンは夏場に好調(Getty Images)

ポイントランク1位のジョン・ラーム、世界ランク1位のスコッティ・シェフラー、ポイントランク3位から史上最多4回目の制覇がかかるロリー・マキロイらを破るのはいまのところ「ミッションインポッシブル」のようだ。

ただし、この3週をアジア勢がプレーすること自体が以前は不可能なことだった。

アジアの男子ゴルファーはその昔、4大メジャーで優勝候補とみなされたことはなく、2009年「全米プロ」でY.E.ヤン(韓国)が全盛期のタイガー・ウッズを破ったことで不可能を可能にした。当時のウッズはそれまでのメジャー14勝(通算15勝)で、54ホール終了時点で首位に立った場合、一度も負けていなかったにもかかわらずだ。そして2021年に松山が「マスターズ」でアジア人として初めてグリーンジャケットに袖を通し、ゴルフ史を塗り替えた。

イム・ソンジェは昨年プレーオフシリーズで2位になった(Getty Images)

31歳のアンは、ヤンがウッズに歴史的勝利を収めたときのことを覚えている。彼はそれに刺激され、2週後に史上最年少で「全米アマチュア」で優勝した。「アジア人初、韓国人初のメジャー優勝は本当に印象的だった。僕たちみんなに、できるんだという自信を与えてくれた。もちろん、それ以前のチェ・キョンジュ選手の活躍も同じで、不可能じゃないことを示してくれた」

松山は今週、トップ50入りによる「BMW選手権」への進出を目指してスタート。継続中の選手で最長の9年連続最終戦「ツアー選手権」出場の更新が期待されている。ベストシーズンは2017年。レギュラーシーズンで3勝を挙げ、2位が3回。ポイントランク1位で臨んだプレーオフでは23位が最高成績で、結局ランク8位に落ち着いた。

「ここにはたくさんの国の選手がいるけれど、まだアジアの選手がフェデックスカップで勝っていないことは自分にも刺激になります。アジアの選手が勝てるともっとたくさんの人が思えるようになってくれたらうれしい」

韓国のイムは昨年、プレーオフでマキロイやシェフラーと果敢に戦い、2位タイでフィニッシュした。ここ5試合はトップ25が3回だけとはいえ、プレーオフでの復調に自信がある。

前週の「ウィンダム選手権」で2位だったアンは7月の「ジェネシス スコットランドオープン」でトップ3。まさに好調の波に乗っており、ツアー選手権進出のチャンスも十分。「自信はある。まずツアーチャンピオンシップに出場することだ」と、その先にある栄光も見据えている。

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