高さ37m“敦賀要塞”は乗り換え980万人をどう導く 北陸新幹線敦賀駅、巨大サイネージで嶺南PR

北陸新幹線敦賀駅の見学会で2階乗り換えコンコースを歩く市民。年間980万人が乗り換えると試算されている=7月30日、福井県敦賀市木ノ芽町
【グラフィックレコード】生かせ“終着駅効果”(敦賀駅)

 12階建てビルに相当する高さ約37メートル、幅41メートルと整備新幹線の駅で最大級となる敦賀駅は、“敦賀要塞”とも言われる。3階の新幹線ホームと1階の特急列車ホームを行き来する「上下乗り換え」式を採用。2階コンコースの改札機は米原駅の7台、金沢駅の5台を大きく上回る19台を備え、約5分で乗り換えが可能とする。

 新幹線延伸時に終着駅となる敦賀駅での乗り換え客数について、福井県敦賀市側は3月定例市議会で1日2万7千人、年間980万人との試算を示した。市の2022年観光客入り込み数は約260万人。敦賀以西の着工のめどは立っておらず、乗り換えラッシュは当面続くことになる。

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 「新幹線学」を研究する青森大学の櫛引素夫教授は「乗り換えのために造らざるを得なくなった巨大スペースをどう有効活用するかが課題。移動通路を(乗り換え客に駅から降りてもらうための)ショーケース的に使えるといい」と指摘する。

 同県嶺南地域の6市町でつくる嶺南広域行政組合は、事業費1億1800万円を投じ2階コンコースに大型サイネージを設置する方針。幅10メートル、高さ2.8メートルの巨大な画面に、6市町のスポットや食、体験を紹介する映像を流す。敦賀市は「気比の松原」や「赤レンガ倉庫」「敦賀ふぐ」、60万球のLED電球によるイルミネーションイベント「ミライエ」などを予定している。

 同組合の田辺辰浩事務局長は「乗り換え客は(ビジネスなどの)目的、予定があり、映像を見てすぐに駅から降りるということはないだろうが、嶺南一帯に興味を持ってもらい、次に来る“呼び水”になれば」と期待を寄せる。市の織田一宏観光部長も「敦賀らしい季節ごとの催しや食をインパクトがある映像でPRしていく」と意気込む。

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 新たな敦賀駅は、敦賀市内を巡るまちなか観光の出発点と、嶺南各地や鉄道遺産群でつながりのある同県南越前町、滋賀県北部へと送り出す広域観光の玄関口という二つの役割を担う。

 西側の「まちなみ口」は現在のJR敦賀駅前で、既に路線バスや市内観光地などを巡る「ぐるっと周遊バス」、タクシーといった2次交通が整う。22年9月には官民連携で整備した飲食棟や広場公園からなる「オッタ」が開業。核となる公設書店「ちえなみき」は小説、漫画、専門書などテーマ別に選書した本が不規則に並ぶ書棚空間が好評で、オープン3カ月で来店者10万人を達成した。駅西エリアが出発点だけでなく目的地にもなりつつある。

 一方、東側の「やまなみ口」は新幹線との同時開業に向けて整備が進む。乗客向けに124台分の駐車場を設け、料金は西側にある駐車場より割安とする予定だ。市外への広域観光の出発点として、修学旅行や団体旅行向けの大型バスの乗降場も備える。米澤光治市長は8月3日、嶺南6市町と滋賀県長浜、米原、高島各市の首長らが集まる「福滋県境交流促進協議会」総会で「敦賀駅は各市町に送り出す役割もある。連携を深めて福滋県境全体の魅力を磨き上げていきたい」と訴えた。

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 来年春の北陸新幹線福井県内開業を契機とした新時代の福井のあり方を探る長期連載「シンフクイケン」。第4章のテーマは「駅を降りてから」です。県外客に観光地などへどう足を運んでもらうか、2次交通を含めた取り組みと課題を探ります。連載へのご意見やご感想を「ふくい特報班」LINEにお寄せください。

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