詳細なデータがない大阪湾のスナメリ、実態つかみ守ろう 神戸大や京都大の合同チーム、継続調査へクラウドファンディング挑戦

瀬戸内海の生態系で上位のスナメリを守ろうと、調査への支援を呼びかけている神戸大学の岩田高志助教=神戸市東灘区深江南町5

 個体数など詳細なデータがない大阪湾のスナメリについて実態を明らかにしようと、神戸大や京都大、水族館関係者らでつくるプロジェクトチームが合同の調査に乗り出した。背びれのないスナメリは、大型のクジラなどと比べて目視調査が難しく、時間と費用がかかる原因に。チームは継続的な調査へ向け、クラウドファンディング(CF)を活用して、資金調達に挑戦している。メンバーは「近海の生態系で上位にあるスナメリの保全を通じて海の環境を幅広く考えるきっかけにもなれば」と願う。(小林良多)

 スナメリは体長約1.5メートル。イルカと同じハクジラの仲間で熱帯から温帯アジアに分布する。浅い水域を好み、日本では九州地方の有明海・橘湾、東海地方の伊勢湾・三河湾など五つの海域に分布している。

 2002年の環境省報告書では瀬戸内海の個体数を国内最大の約7600頭と推計。各地とも調査は不十分で詳細な個体数は分かっていないが、瀬戸内海中東部では目視調査を基に1970年代以降、1割以下に減少したとの指摘もある。

 プロジェクトリーダーの神戸大大学院海事科学研究科、岩田高志助教(40)によると、餌の減少など生息環境の変化が影響を与えた可能性がある。航行する船との衝突や漁業者が仕掛けた網への混入も脅威になっている。

 大阪湾では本格的な調査がない中、近年は関西空港周辺などで漁業者らの目撃が少なくないという。保全へ向けて現状を把握しようと、研究者らが昨年から調査に取りかかった。

 大阪湾の入り口となる明石海峡と紀淡海峡に水中マイクを計4カ所取り付け、通過する個体の鳴き声を探査。海域の計100地点では海水中から環境DNAを採取し、周辺に個体がいるかどうか調べている。

 こうした活動を継続するほか、2025年秋までの2年間に船上からの目視調査を年4回行う。動物に小型のセンサーやカメラを取り付け、生態を明らかにする「バイオロギング」の手法も取り入れるという。

 岩田助教は「都市部に囲まれた大阪湾では人がスナメリの生息環境に与える影響が強い。継続的な調査に支援を呼びかけ、身近なスナメリの存在を知ってもらう意図がある」と話す。

 寄付募集はCFサイト「レディーフォー」で31日まで。特製ステッカーやポーチ、乗船調査への参加権利など、金額に応じたギフトが贈られる。目標額300万円に達しない場合は募集は無効となる。岩田助教の研究室TEL078.431.6323

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