夏の甲子園初戦を12日に控えた八学光星野球部の総勢149人の部員たちを、たった2人の女子マネジャーが陰ながら支えている。小村千鶴さんと大坊桃香さん(ともに3年)だ。夢舞台に挑む選手たちへ、2人は「最後まで諦めず、いつも通りがむしゃらにプレーしてほしい」とエールを送る。
上市川小(五戸町)2年時に野球を始めた小村さんは、倉石中でも男子部員に交じって一塁手としてプレーしていた。3年生になり、大好きな野球を続けたい-と女子野球部のある花巻東高(岩手)への進学を考えたが、小学生の頃に参加した八学光星野球部による野球教室の記憶が頭から離れなかった。
子どもたちに優しく丁寧に野球を教えてくれた選手たち。「親元を離れてまで野球に励む姿がかっこよかった」と小村さん。女子野球の夢を諦めてでも、「甲子園を目指して頑張る選手のサポートがしたい」と思うようになった。
「やるんだったら全力でサポートしろ。途中で逃げ出すな」との家族の言葉もあり、入部を決めた。
大坊さんは、八学光星野球部のマネジャーだったはとこの大坊響さんが同校3年時、2019年の甲子園で記録員としてベンチに入っている姿を見て、マネジャーを志すようになった。
百石中(おいらせ町)2年時には、既に八学光星への進学を決意していた。中学の野球部の先生だけに「私もはとこと同じ舞台に立ちたい」と思いを打ち明けると、「スコアを書く練習をしてみるか」と夢を応援してくれた。当時は吹奏楽部に所属していたが、休日は野球部の練習試合に通い続けた。スコアの練習に明け暮れた努力も実り、夢をつかんだ。
マネジャーの業務は、試合時のスコア記入やアナウンス、打率計算や部室の掃除など多岐にわたる。平日の練習では、約30人の投手陣が体づくりのために食べるおにぎりも握り続ける。「入部当初は体力がなく、ついていくのに精いっぱいだった」と大坊さん。週6日のマネジャー業に励むうちに、徐々にこなせるようになり、「選手からの『ありがとう』の一言だけで頑張れている」と小村さんと口をそろえる。
練習中は「マネージャーどこ?」と2人を探し、頼る選手も多い。青木虎仁外野手(3年)は「149人も部員がいるのに、たった2人で支えてくれている。背番号を縫い付けている糸が切れた時も、すぐに直してくれて助かった」と感謝を寄せる。
「人を支える仕事がしたい」と、2人とも将来の夢は救急救命士。初戦は小村さん、勝てば次戦は大坊さんが記録員としてベンチに入り、ナインに声援を送り続ける。