「えびす様に失礼のないように」狂言師野村萬斎さん、ゆかりの演目熱演 西宮神社で伝統芸能の夕べ

トークショーで話す野村萬斎さん(左)吉井良昭宮司=西宮市社家町、西宮神社

 狂言師の野村萬斎さん(57)が出演する「西宮・伝統芸能の夕べ」が10日、兵庫県西宮市社家町の西宮神社であった。拝殿前の特設舞台で西宮神社ゆかりの演目「夷毘沙門」が上演され、萬斎さんの繊細な身のこなしや力強い声に約250人の観客が酔いしれた。(村上貴浩)

 イベントは市内を拠点に活動する「日本伝統芸術文化財団」が伝統芸能に親しんでもらおうと2020年に始め、今年で3回目。昨年は人形浄瑠璃文楽の人形遣いで人間国宝の吉田和生さん(芦屋市)が、同じく西宮神社に縁深い演目「釣女」を披露した。

 日没後の午後6時半、萬斎さんが着物姿で舞台に登場。前半は吉井良昭宮司や石井登志郎市長とのトークショーで、狂言や「夷毘沙門」について話した。後に控える舞台でえびすを演じる萬斎さんは「西宮神社に来たのは初めて。えびす様に失礼のないようにしたい」と笑いを誘った。

 後半は狂言の2演目を上演。辺りが暗くなり、荘厳な雰囲気に包まれた舞台で最初に「柿山伏」が演じられた。柿を盗み食いした山伏が木の持ち主に見つかり、さまざまな動物のまねをさせられるストーリーで、滑稽な所作が観客を笑わせた。

 続く「夷毘沙門」は、西宮のえびすと鞍馬の毘沙門が美しい娘を取り合って争う物語。えびす面を付けた萬斎さんが笛や太鼓の音に合わせて踊ったり、力強くせりふを発したりする姿に観客は目を見張り、終演後には大きな拍手がわいた。

 観賞した団体職員の女性(32)=西宮市=は、年に2回ほど能など伝統芸能を見るといい「萬斎さんは動きに切れがあり、声の届き方も力強くて、存在感があった」と満足そうに語った。

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