国宝・泰澄の伝記じっくり いしかわの霊場後期展

掛け軸「阿弥陀三尊来迎図」に見入る来館者=金沢市の県立歴史博物館

  ●阿弥陀三尊掛け軸も公開 県立歴史博物館で開催

 県立歴史博物館の夏季特別展「いしかわの霊場―中世の祈りとみほとけ―」(北國新聞社特別協力)の後期展は11日、金沢市の同館で始まった。白山を開山したとされる泰澄の伝記の写本「泰澄和尚(かしょう)伝」(国宝・神奈川県称名寺蔵)や、浄土宗西念寺(七尾市)が所蔵する県指定文化財の掛け軸「阿弥陀三尊来迎図(らいごうず)」が加わり、来館者は中世の浄土信仰の広まりを示す貴重な資料に見入った。

 称名寺の泰澄和尚伝は現存する最古の写本。伝記の由来を記した奥書によると、平安中期の天台宗の僧・浄蔵の口述に弟子が注記を入れたとされる。由来の真偽は不明だが、原本は遅くとも12世紀に成立したとみられており、泰澄の足跡を今に伝えている。

 西念寺の阿弥陀三尊来迎図は鎌倉時代(13世紀)の作品で、1469(文明元)年に建立したとされる西念寺より古い歴史を持つ。掛け軸の伝来は明らかでなく、博物館の担当者は「別の古い寺院から伝わった可能性もある」と話した。

 このほか、初の出張公開となった真言宗明泉寺(穴水町)の「千手観音立像」や、南北朝時代の中能登町指定文化財「木造十一面観音立像」、数々の出土品や書物など130点以上が展示されている。

 後期展は9月3日までで、観覧料は一般千円、大学生・専門学校生800円、高校生以下無料となる。

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