救急車が足りません! 出動最多の昨年上回る 長崎市消防局「適正利用を」

119番通報を受ける消防局員。救急出動中の消防車は画面に赤色で表示される=長崎市興善町、市消防局

 救急車が足らない-。長崎市消防局管内の救急出動件数が、過去最多だった昨年を上回るペースで推移している。119番通報から現場到着まで時間を要する上、搬送先が見つからないなど即時対応ができない事案が増加。生命に関わる一刻を争う場合もあり、同局は救急車の適正利用を呼びかけている。
 同局によると、9日現在の救急出動件数は1万7570件で、前年同期比603件増。昨年1年間の2万8788件に迫る。7月中旬以降、1日当たりの出動は平均100件超で、昨年の78.9件を上回る。同局は「第9波」とみられる新型コロナウイルス感染拡大に伴う陽性者や感染疑いのある風邪症状を訴える通報増が背景にあるとみる。
 市内3署に配備された救急車15台は稼働状態が続き、7月以降、通報後、即時に対応できなかったのが20件。統計を取り始めた昨年12月21日から8月9日までで70件に上り、傷病人を待たせた時間は平均26分。2022年は通報から現場到着まで平均約9分だった。
 搬送先が決まらない事案も急増。1回の出動につき、搬送する医療機関との交渉が20回を超すことも。80代女性の搬送時、16回交渉し、ようやく搬送先が決定。通報から病院到着まで約5時間かかったという。
 最近の傾向で多いのが、救急車の出動要請後、医療機関への搬送を辞退する「不搬送」。発熱や風邪症状で通報したものの、搬送先が決まらず「自宅で様子をみる」と申し出る人が相次ぐ。9日までの不搬送は約400件で、今年の搬送件数全体を押し上げている要因の一つとみられる。
 同局警防課の岡本和幸課長は「緊急性があるけがや病気の場合は迷うことなく救急車を要請してほしい」としつつ、「台数に限りがあり、出払っている状況が増えていることも理解してほしい」と話した。


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