7月下旬からコロナ感染者増 青森県内医療機関警戒 お盆帰省で拡大恐れも

救急搬送患者の対応に追われる健生病院のスタッフら。ほぼ全ての患者にコロナ検査を行う=10日午後3時半ごろ

 青森県内の新型コロナウイルス感染者が7月下旬から増え始め、医療関係者は警戒を強めている。熱中症疑いで搬送された人の中に、コロナ陽性者が含まれ、対応に追われるケースも続いている。一部医療機関からは「医療が逼迫(ひっぱく)しつつある」との指摘も聞かれる。今後、お盆の帰省で人の動きが活発化し、感染がさらに広がる恐れがあるため、関係者は感染防止意識を一層持つことや、症状が出たら早期に受診することを呼びかけている。

 弘前市で最高気温が39.3度に達した10日、健生病院(同市)の救急外来を受診したのは57人。このうちコロナ感染は12人、熱中症は11人だった。

 感染対策を取りながら患者を受け入れているため、やむを得ず救急車内で患者に待機してもらうことも。同日は最大3台の救急車が病院敷地内に待機。約1時間、車内で受診を待った患者もいた。

 同病院救急集中治療部の太田正文科長は「熱中症を訴えて受診した人に陽性者が交じっていることがある。症状だけではコロナか熱中症か区別がつかないため、患者ほぼ全員にコロナ検査を受けてもらっている」と説明。コロナ感染のほか、他の疾患による入院で病棟は逼迫しつつあり「病床利用率は95%前後。ベッドの確保は毎日綱渡りだ」と述べた。

 青森市の救急病院でも7月末ごろから発熱外来受診者が増え、受診者のコロナ陽性率は8割に達している。「救急車の受け入れ台数がかなり増えている。電話対応も大変だ。感染者の増加は、祭りによる人の動きの影響が大きいと思う。感染のステージが一つ上がったと感じる」と担当者。「声がれや喉の違和感を感じても夏風邪と判断し、検査しない人も相当数いるようだ」と、県発表のデータより実際の感染者数はかなり多い可能性を指摘した。

 県立中央病院(青森市)の北澤淳一・新興感染症対策推進監は「変異株が、ワクチンでできた人の免疫をかいくぐっている。ワクチン効果が薄れている」と、感染者が増えている一因を説明。高齢者や基礎疾患がある人が重症化して入院する事例もあるとして「症状が現れたら早期に受診し、早めに治療することが大切」と述べた。

 「最近2、3週間は明らかに感染者が増えている」という弘前市医師会の澤田美彦会長は「今後、お盆などで人が集まる機会が多くなるので、感染者数が増えることが予想される。感染に十分気をつけながら行動する必要がある」と強調した。

▼感染者 「5類」直後の4倍/青森県内

 県が公表する新型コロナウイルスの感染者数は、法的な位置付けが5類へと引き下げられた5月上旬と比べると、直近では4倍以上に増えている。増加傾向は7月から顕著に。これまで青森県は、全国の中で感染者数が少ない地域だった。県は現状について「感染拡大の入り口に来ている。今後、お盆や帰省シーズンの影響が出てくる恐れがある」との認識を示す。

 県が毎週公表している感染症情報によると、1定点医療機関当たりの新型コロナ患者数は、5類移行直後の週(5月8~14日)の3.27人に対し、直近1週間(7月31日~8月6日)は13.62人。5、6月は患者数が微増傾向で推移したが、7月以降は患者数の前週比が1.4~1.6倍台の週が続き、増加ペースが速くなっている。

 5類移行後は、感染者の全数把握を行わなくなった。集計方法が異なるため単純比較はできないものの、直近の感染者数の水準は、県内で第8波の拡大が続いていた5類移行前の昨年11月初旬ごろに近い。

 春以降の感染状況は、都道府県ごとにばらつきが大きかった。そのため、人の往来が感染拡大に影響する可能性がある。県は、旅行・帰省時も含めて、手指衛生や換気、症状がある場合は人との接触を控えるなど、予防や感染を広げないようにする対策を呼びかけている。

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