北陸新幹線「敦賀から西」福井県嶺南への旅は JR小浜線や周遊バス…観光地への足いかに

若狭湾沿いを走るJR小浜線の列車。昼間の時間帯の本数が少なく、観光客にとって利便性が高いとは言い難い=小浜市東勢
北陸新幹線「敦賀から西へ」

 「新幹線開業は、首都圏はもちろん全国にこの(嶺南)エリアを知っていただく大きなチャンス」。今年4月、福井県の嶺南6市町やJR西日本金沢支社などで構成する「小浜線沿線観光活性化会議」の会合で、同支社の漆原健支社長は強調した。

 北陸新幹線の当面の終着駅となる敦賀駅から、美浜、若狭町にまたがる県道三方五湖レインボーラインの山頂公園へは約27キロ、高浜町のシーフードマーケット「UMIKARA」までは約61キロ。観光客が敦賀から他の5市町を訪れるには、新幹線降車後に長距離移動が必須となる。2次交通は開業効果を嶺南全体に波及させる鍵を握る。

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 各市町が移動手段としてまず挙げるのはJR小浜線だ。しかし、現状では利便性が高いとは言い難い。小浜方面へ向かう敦賀発の便は、午前6時~午後9時台の1日12便。主に通勤通学を想定したダイヤ編成で、観光客が移動する昼間の時間帯は“空白”が目立つ。午前7時49分発の次の便は約3時間半後の同11時18分発、その次は午後1時18分発。新幹線から乗り換えるとすれば長い待ち時間が生じる。

 小浜線の活性化会議に出席した関係者によると、非公開で行われた意見交換では、新幹線と接続性の高いダイヤや増便、臨時便の要望が各首長から相次いだという。小浜線各駅から目的地へ向かうコミュニティーバスのダイヤなどに影響するため、市町にとっては重要な問題だが、JR西から明確な方針は示されなかった。

 「そもそも観光客は、小浜線を利用してくれるのだろうか」。各市町からはこんな声も聞こえてくる。

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 一方、鉄路を補完する交通手段として導入が検討されているのが、観光地を巡る周遊バスだ。

 県や美浜、若狭両町などでつくる三方五湖エリア全体協議会では敦賀、美浜駅を発着点に、両町の観光施設などを巡る「ゴコイチバス」の実証運行を2021年から開始した。今年は行楽シーズンの土日祝日や大型連休など、7月9日までに計72日間で実施。バス停は一部変更しながら、レインボーライン山頂公園や美浜町レイクセンターなど9~16カ所設定し、1日7~9便運行した。

 延べ2065人の利用者アンケートでは、回答者468人中360人が県外在住者で、このうち33.1%が関東地区だった。同会事務局の県嶺南振興局嶺南プロジェクト推進室の堀田高史総括主任は「新幹線開業後も一定のニーズが見込まれる」として、敦賀開業後の本格運行に向け準備を進めている。

 小浜市、おおい、高浜両町も連携し、敦賀駅からの周遊バスの実証運行を計画している。開業時の実施を目指し、今秋には具体的なルートを決める予定だ。

 ただ、観光客目線で考えると、各市町に点在する観光地周遊には、より自由度の高いレンタカー利用も想定される。敦賀駅から高浜町の最西端までは約72キロ。横断する形で国道27号と舞鶴若狭自動車道が通っており、バスや電車より移動時間を短縮できるメリットがある。

 小浜市新幹線・交通まちづくり課の角野覚課長は「バスの実証運行で、利便性や採算面の課題は必ず出てくる。レンタカーの利用者に特典をつけて周遊を促す手も考えられる。最適な手段を検証していきたい」と話す。

=第4章おわり=

⇒【記者のつぶやき】公共交通だけじゃないかも

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 来年春の北陸新幹線県内開業を契機とした新時代の福井のあり方を探る長期連載「シンフクイケン」。第4章のテーマは「駅を降りてから」です。県外客に観光地などへどう足を運んでもらうか、2次交通を含めた取り組みと課題を探ります。連載へのご意見やご感想を「ふくい特報班」LINEにお寄せください。

シンフクイケン・各章一覧

【第1章】福井の立ち位置…県外出身者らの目から福井の強み、弱みを考察

【第2章】変わるかも福井…新幹線開業が福井に及ぼす影響に迫る

【第3章】新幹線が来たまち…福井県外の駅周辺のまちづくりなどをリポート

【第4章】駅を降りてから…観光地へどう足を運んでもらう?

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