株式投資のリスクを減らす【累進配当】とは?長期投資向きでGPIFも採用か

投資をしている方なら誰しも「効率が良く、安定している投資方法が無いか?」「どんな商品や銘柄が良いのか?」「なるべく失敗やリスクが少ない方法を……」などと、あれこれ考えた事があると思います。

しかし「投資」とは、自己資金を投じることで利益を見込むものです。銀行の預貯金とは違い利益は確約されず、元本も保証されていません。大きな前提としてリスクが付きものです。とはいえ、株式投資に対して少しでも不安要素を拭いたいのは誰でも同じだと思います。

今回は、株式投資のリスクを少しでも減らして投資をしたい方、特に長期投資を考えていらっしゃる方、これから株式投資を始めてみたい方などに役立てていただきたい、「累進配当」について紹介したいと思います。


累進配当とは

累進配当とは、配当金を減配をせずに配当水準を維持し、または利益成長に合わせて増配し続ける事を指します。通常、決算発表の時に企業側が株主に対して1株あたりの配当金額を発表するのですが、この時に配当金額を減らさず、増加させることを目標としている企業の配当金を累進配当と呼びます。

この累進配当を宣言している企業がいくつかあります。リスクが少ないので株主にとってはありがたい存在だと思います。とは言え、業績内容が悪く大幅に利益が下落するような事になれば、減配が避けられない場面もあるでしょう。しかし、少なくとも前年と同じ配当を得られるのであれば、他の銘柄に比べて安心して投資ができるのではないでしょうか。

昨年度、大幅な利益を出したGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方法も、この様な銘柄を採用しているものと思われます。お金を預貯金口座で眠らせておくのではなく、しっかりと活かし働いてもらうといった考え方です。

累進配当を公表した企業

2024年1月から新NISAが開始され、株式投資を始める方が増えることを考えあわせると、今後もこの様な安定的な投資先である事を謳う企業が増えてくる可能性が高いです。また企業側のメリットとしては、他社に比べ多くの投資家に支持されていることで、思わぬ暴落などの場面においても、株価の下支え要因になる事が上げられると思います。

また、2023年6月30日(金)から日本経済新聞社は、国内企業の配当に着目した2つの株価指数、「日経連続増配指数」「日経累進高配当株指数」の算出・公表を行なっています。

そこで、ここからは日経累進高配当株指数に採用はされていないものの、累進配当による積極的な株主還元を掲げている企業と、その内容についてお伝えしたいと思います。

●味の素(2802)
2023年2月に公表した中期ASV経営 2030 ロードマップに置いて、ノーマライズドEPSに基づく配当と累進配当政策を導入するとしています。総還元性向50%の方針を維持すると掲げており、株主還元に積極的な姿勢がわかります。

●三井物産(8031)
2023年5月、中期経営計画2026を公表し、その中で2024年3月期から2026年3月期を対象に、1 株あたり150円(中間・期末合計)を下限として、配当維持または増配を行う累進配当を導入するとしています。また同期間において、3年間累計の基礎営業キャッシュ・フローの37%程度を目安に、配当・自己株式取得を通じた株主還元を実施する方針を明らかにしています。

●丸紅(8002)
2023年5月、中期経営戦略「GC2024」期間(2023年3月期から2025年3月期)において、配当は 1 株当たり年間配当金78円を基点とし、中長期的な利益成長に合わせて増配していく累進配当を実施すると公表しています。

● 物語コーポレーション(3097)
2023年8月の決算発表時に、同社の持続的な利益成長を通じて、安定的かつ持続的な配当金の増加による株主還元を充実させていくことが重要と考え、累進配当を導入し、連結配当性向20%以上を目安とすると公表しました。

●ニッコンホールディングス(9072)
2023年8月の決算発表時に、同社の利益配分について、配当性向40%を目途とすることに加え通期の合計配当金額は、原則として前年度実績から減配をせず、配当の維持もしくは増配を行うことを基本方針とする事を公表しました。

累進配当を公表した企業の株価は、堅調に推移しています。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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