神戸空襲で犠牲か、朝鮮人の遺骨が眠るパゴダ 当時「日本人」、彼らの境遇に思いをはせて

朝鮮人のものとされる遺骨も納められている東福寺のパゴダ(仏塔)と同寺の圓通良樹住職=神戸市中央区国香通7

 神戸市中央区国香通7の東福寺の敷地内に、檀信徒のために建立された美しいパゴダ(仏塔)が立っている。そこには、太平洋戦争期に寺に預けられた朝鮮人のものとされる遺骨も眠る。当時を知る在日1、2世らは次々と他界し、研究者は「植民地支配の結果、各地で亡くなった朝鮮人のことを思い出してほしい」と訴える。(杉山雅崇)

 東福寺の圓通良樹住職によると、この遺骨は細かく砕かれた状態で木箱に収められており、正確な人数は分からない。戦争末期か戦後すぐに役人を名乗る男性から、初代住職の圓通祖道さん=故人=に預けられた。男性は「空襲で亡くなった朝鮮人の遺骨です。預かってほしい」と言ったという。結局、長く本堂に安置されていたが、その後ミャンマーから寄進を受けたパゴダに入れられた。

 

■製鉄所や航空機工場に徴用

 無縁仏となったのは、どのような人々だったのか。戦後、在日コリアンらによって継続的に調査が進められていた。

 兵庫県朝鮮人強制連行真相調査団の団長を務め、戦中の徴用された朝鮮人を研究していた在日コリアンの梁相鎮さん=故人=は、神戸空襲で亡くなった朝鮮人の実態を企業の史料などから調べた。

 梁さんは、現在の中央区にあった製鉄所や航空機工場などの存在に注目。史料から両工場に徴用された朝鮮人がいた事実を掘り起こし、近くの寮にいた朝鮮人が空襲で亡くなったという証言も得て、「これらの犠牲者の遺骨が持ち込まれた可能性がある」とした。

 調査結果を踏まえ、梁さんは2003年、論文集「近代の朝鮮と兵庫」に論文を掲載。過去には東福寺で慰霊祭も執り行われた。

 神戸空襲では8千人以上の市民らが亡くなったとされるが、今もって正確な被害者数は不明だ。朝鮮人犠牲者の実態把握も進んでいない。

 在日朝鮮人運動史研究会関西部会代表で、神戸学生青年センター理事長の飛田雄一さんは「神戸にいた朝鮮人の全てが強制連行の被害者ではなかったにしろ、植民地支配によって日本にいた多くの朝鮮人が空襲で亡くなったのは事実」とし、「当時の朝鮮人は『日本人』とされていた。その意味と、彼らの境遇に思いをはせてほしい」と語る。

© 株式会社神戸新聞社