旧盆用ハス育てて60年 体力限界感じても「頑張る」

ハスの花を収穫する川島さん=七尾市赤浦町

  ●七尾・86歳の川島さん 酷暑で生育早く、開花調節に苦労

 七尾市赤浦町に旧盆の墓参りなどに用いられるハスを60年以上育てる男性がいる。知人から譲り受けた3株からハスの栽培を始めた農業川島政一さん(86)。現在は年間約400本を出荷しているが、近年は酷暑で成長が早まり、旧盆時期に合わせた生育が難しいという。体力の衰えを感じているものの「待ってくれているお客さんのために頑張る」と汗を流す。

 川島さんは約60年前、妻の春子さん(84)とともに、自宅の水田でハスの栽培を始めた。少しずつ育てる数を増やし、栽培面積は約18アールにまで広がった。

 川島さんによると、ハスは開花後すぐに花が散ってしまうため、つぼみのまま卸す必要がある。年々気温が高くなっていることから盆を迎える前に開花してしまうことが増えており、肥料の量などで成長具合を調節して対応しているという。

 猛暑続きで度々水田が干上がってしまうこともあり、以前は4日~1週間の間隔で行っていた水を張る作業は、今では2日に1回のペースになった。日中は暑さが厳しく、除草や収穫の作業も少しでも気温の低い朝晩に行わざるを得ない状況だという。川島さんは「これまでの感覚を変えていかなければ育てるのは困難になってきた」と吐露する。

 年齢を重ね、体力の限界も感じ始めているという川島さん。それでもこの時期の風物詩である花を待ち望む地元客のためにとハスを丹精する日々だ。

 川島さんが花を卸す同市藤橋町の「さいだ花店」では約30年前から、川島さんの育てたハスがお供え用の仏花として人気を集めており、「このハスじゃないとご先祖さまを迎えられない」との声が聞かれるほど。同店の斉田真紀子さん(48)は「ハスはお盆に欠かせない花。手間をかけて作ってもらえて感謝している」と話す。

 川島さんは「60年かわいがって育てきた。元気なうちは頑張りたい」と意欲を見せた。

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