メジャー初Vから“始まった”悪夢 リリア・ヴ「もう勝てないと思った」

圧勝でリリア・ヴが全英制覇(撮影/村上航)

◇海外女子メジャー最終戦◇AIG女子オープン(全英女子) 最終日(13日)◇ウォルトンヒースGC (イングランド)◇6881yd(パー72)

首位タイスタートから後続に差をつけて入ったサンデーバックナイン、リリア・ヴはずっと冷静だった。後半11番(パー5)で同じ2サム最終組、地元イングランドの大声援を受けるチャーリー・ハルがチップインイーグル。3打差に詰まって“アウェー”のムードがさらに高まっても「彼女のプレーを見ていて楽しかった。私がコントロールできるのは、私のプレーだけだから、それを貫いて(あとは)楽しもうと思った」と動じなかった。

初タイトルからの悪夢があった(撮影/村上航)

15番で唯一のボギーをたたいても、上がり3ホールで2バーディを追加。最終18番も長いバーディパットを流し込み、この日のベストスコアに並ぶ「67」で通算14アンダー。6打差をつける圧勝でライバルたちを寄せ付けなかった。4日間のフェアウェイキープ率9位(75%)、パーオン率6位(76%)、平均パット数2位(1.61)を記録。スキのないプレーぶりをスタッツも証明している。

シーズン初戦として臨んだ2月「ホンダLPGAタイランド」での初優勝から一気にブレーク。4月「シェブロン選手権」に続くメジャー2勝目で、米国人選手としては1999年のジュリ・インクスター以来となるシーズン複数回のメジャー優勝を成し遂げた。初の世界ランキング1位に浮上することが決まっても「とてもシュールな気分。この2か月間、自分のプレーに苦しんでいたから」と実感がない。

メジャーは今季2勝目(撮影/村上航)

最初のメジャーを勝って以降は7試合で4度の予選落ち。「KPMG全米女子プロ」、「全米女子オープン」でも週末に残れず、特にペブルビーチでは2日目に「82」をたたいて146位に沈んだ。「あまりにもひどいプレー。もう二度と勝てないかもしれないと思った」。そんな絶望から5週後に再びのビッグタイトル。もっと苦しい時期があったから乗り越えられた。

「2019年のルーキーイヤーは本当につらかった」。レギュラーツアー9試合で予選通過は一度きり。追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの感染拡大が始まったころに祖父が病気で亡くなった。ツアー会場に向かう前、お見舞いで入院先を訪れた日のこと。「試合でベストを尽くすように」――。それが最後の会話になった。

家族への思いが(撮影/村上航)

「試合に出るたび、ほとんど最下位だったときにはクラブを置いて、ほかのことをしようと思ったこともある。そんなときに母は『あなたには実力がある。ここで戦って一番になりなさい』と励ましてくれた。母の支えがあって、私はここにいる」

天国の祖父、そしていつも近くにいる母へ。新たな世界ナンバーワンは、ありったけの感謝を伝えた。(イングランド・サリー/亀山泰宏)

© 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン