雲仙土砂崩れ2年 故郷で撮影イベント カメラマン森さん「写真なら思い出せる」

撮影会の来場者と会話を交わしながら笑顔で写真を撮る森真衣子さん(右)と次姉の橋爪啓子さん=雲仙市、雲仙BASE

 2021年8月13日に長崎県雲仙市小浜町雲仙の小地獄地区で発生した土砂崩れ。両親と姉を失った福岡市の会社員でフリーカメラマン、森真衣子さん(27)は、発生から2年となる13日、故郷の「まつり雲仙」に参加し撮影会を催した。タイトルは「なんでもない日の撮影会」。突然の災害で大切な人を失い、思いを強くした。「家族のさりげない日常を撮り、記念日ではない今この瞬間を写真に残したい」
 大雨による土砂崩れで家屋2棟が全壊。真衣子さんの父保啓(やすひろ)さん=当時(67)=、母文代さん=同(59)=、姉優子さん=同(32)=が死亡した。降り始めの8月11日から9日間の雲仙岳の降水量は約1290ミリ。例年の8月1カ月分の4倍に上った。
 父保啓さんは「雲仙温泉 青雲荘」の元支配人、母文代さんは結婚前まではバスガイドとして勤務した。真衣子さんは両親を「優しくユーモアがあった」と懐かしむ。雲仙温泉観光協会(当時)職員だった長姉優子さんについて「常に全力で行動する真っすぐな性格だった」と振り返る。
 真衣子さんは昨年まで4年間、福岡市の子ども写真スタジオに勤務。現在は別の仕事をしながら副業として家族写真などの撮影をしている。
 まつり雲仙は、旧市立雲仙小中学校を活用した交流拠点「雲仙BASE(ベース)」で開催された。優子さんは生前、雲仙BASEの立ち上げに奔走しており、その縁で撮影会を開くことになった。
 「なんでもない日の撮影会」に訪れたのは家族連れや夫婦、子どもたちなど64組。真衣子さんは明るい声で話しかけながらシャッターを切った。「きれいに撮ってもらえた」「すてきな記念になった」。撮影を終えると皆、笑顔になっていた。写真データを持ち帰った。
 次姉の橋爪啓子さん(31)=東京都=も運営を手伝い、来場者を誘導した。啓子さんは「このにぎわいを見て、姉は喜んでいると思う」。
 真衣子さんは「記憶には限界があるが、写真があれば鮮明に思い出せる。何十年後かに写真を見返したとき、撮っていてよかったと思ってほしい」と語った。
 「ありのままを撮れるカメラマンになりたい」。癒えない悲しみと、撮影した家族らの笑顔を胸に刻み、未来を見据える。

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