格闘家から画家に転身 青森県弘前市出身・村上さん、地元で個展 17日まで

作品に囲まれ笑顔を見せる村上さん

 青森県弘前市出身で画家として25年以上活動する村上忠さん(51)=茨城県在住=が、地元での初の個展を同市の百石町展示館で開いている。村上さんは高校卒業後、プロの総合格闘技団体「修斗」で戦っていた異色の経歴を持つ。「曲折した人生だが、全てのことに意味があり今の生き方につながっている」と話す。17日まで。

 村上さんは、5歳の時から漫画を読むのが好きで、暇があれば絵を描いていた。一方で、格闘漫画「北斗の拳」の主人公・ケンシロウに憧れ、高校入学後、空手と合気道の道場に通った。「もっと強くなりたい」と、卒業後上京し修斗に所属。4年後、フェザー級(58キロ以下)で同団体内のランキング2位になった。

 しかしその直後、燃え尽き症候群になった。「過去にいじめられた記憶を消し去るために格闘技を始めたが、自分の心は喜んでいなかった」と振り返る。翌年、総合格闘技を引退、子どもの頃に純粋な気持ちで取り組んでいた絵に再び心を向けた。

 楽しい思い出も鬱々(うつうつ)とした気持ちも包み隠さず絵に表した。全てのものに神が宿るという日本人の古くからの考え方に共感し、畳2枚分の大きさのキャンバスに岩木山神社の祭神でもある多都比姫神(たつひひめのかみ)や、千本の手で人々を救う千手観音をモデルとした絵を極彩色でダイナミックに、かつ優しく描く。

 会場にはほかにも、5年前から描きためたA3サイズの作品やはがき大の作品50点以上が並ぶ。村上さんは「神仏信仰が盛んな地元で個展を開けてうれしい。絵を見て、自分なりの思いを聞かせて」と話した。

 最終日は、津軽三味線演奏家の五錦雄互さん(埼玉県在住)の演奏に合わせ村上さんが即興で絵を描く。

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