高校生にメッセージ「一生懸命」を財産に 数学や物理解説の人気ユーチューバー「ヨビノリたくみ」さん

講演するヨビノリたくみさん=関西学院大学神戸三田キャンパス

 大学生らに人気のユーチューバー「ヨビノリたくみ」さん(30)が、関西学院大学神戸三田キャンパス(兵庫県三田市学園上ケ原)で講演した。数学や物理を分かりやすく解説するチャンネル「予備校のノリで学ぶ『大学の数学・物理』」の登録者数は100万人以上。オープンキャンパスで訪れた高校生らに、これまでの人生や、「今を一生懸命頑張ること」の大切さを語った。(まとめ・尾仲由莉)

 小学生の頃はパズルと手品が好きだった。パズルは後に数学好きへとつながった。手品は、相手にコインが見えていないかを確認するため親からビデオを借りるほど熱中した。人からどう見られているかを意識しだした経験だった。

 中学生になると、小学校高学年から通っていた将棋の道場を続けるため、両立できそうな卓球部に入部した。いざ入ってみると、なんと全国レベルで部員は100人以上。発表されるランキングで上位に入らないと廊下で練習させられ、試合にも出られない。

 それは嫌だと校外のクラブチームで練習を始め、部内上位5位まで上がった。勝つことにしか興味がなく、「得をする」手法を見つけ出した。男子中学生は体が小さく、高い球を正確に打ち返せないことに目を付け、高い球だけを打ち続ける手法だ。もちろんクラブのコーチからは反対されたが、この手法で県大会5位になった。

 当時は将棋や卓球にのめり込み、勉強は手に付いていなかった。ただ、小学生時代から好きなパズルの要素がある数学だけは得意だった。定期テストで加点になるおまけの問題を、学年で自分だけ解けたことがあった。すごいともてはやされた成功体験と、「数学ができるやつ」と周りから言われ、できなければいけないような気がして、数学だけは努力し、中学生の間、得意であり続けた。

 高校生になって進路を考える際、当初は大学に行く発想すらなかった。担任教員に「大学に行きなさい」と諭され、そこで初めて予備校に行ったが、「世の中にこんなに良い授業、うまい授業があるのか」と衝撃を受けた。着実に学力を伸ばし、模試で志望校のA判定が出ると、「絶対に受かるなら試験日まで何をしたらいいのか、面白くないじゃないか」と考え、志望校を2回変えて国立大学に合格した。

 大学生になると、中学生の集団塾で講師のアルバイトを始めた。授業中の自分の姿をビデオに録画して見返すと、体が揺れていたり、板書が斜めになっていたり、生徒が集中できない要素がたくさんあることに気付いた。小学生の時の手品の練習で、人からどう見られているかを意識した経験がここでも役に立った。

 大学の授業は、予備校の授業の面白さを知ってしまった自分には面白くなかった。そもそも授業内容が難しい。同じように感じている学生たちのため、集団塾で講師をした経験を生かし、東京大学大学院生のときにユーチューブで解説動画の投稿を始めた。

 これまでを振り返ると、今につながっていることは、一生懸命やったこと。一生懸命やって得をして、また得をしたくなって一生懸命にやる。受験で一生懸命勉強することも、結果はどうであれ、必ず役に立つ時が来る。将来のことは考えず、とりあえず今を一生懸命に頑張ってほしい。

© 株式会社神戸新聞社