水俣病、現在も地続き ドキュメンタリー「水俣曼荼羅」、沖縄市で上映 完成まで20年の大作

 【沖縄】「極私的エロス1974」「全身小説家」などの作品で知られる原一男監督の最新ドキュメンタリー映画「水俣曼荼羅(まんだら)」が沖縄市のシアタードーナツで10日から公開されている。9日は代表作「ゆきゆきて、神軍」が上映され、トークライブにも監督が出演した。原監督は「『ゆきゆきて、神軍』は過激な生き方をしている面白い人を撮ったけど、『水俣曼荼羅』は普通の人を撮って面白くなっている」と来場を呼びかけた。

 「水俣曼荼羅」は完成までに20年を要した6時間12分の大作だ。2004年の最高裁判決の原告団の勝利をきっかけに、再び熱を帯び始めた裁判闘争を追う。過去の公害と捉えられがちな水俣病が、現在も地続きであることを浮き彫りにする。原監督は「劇映画のように構成している。見た人の98%が飽きなかったと言っている」と力を込めた。

 シアタードーナツの宮島真一代表は「公害による健康被害は現在のPFOS・PFAS問題にもつながる」と上映を決めたという。「被害に人生を翻弄(ほんろう)された人のことを考えると、作品の長さは大した問題ではない。映画からメッセージを受け取る大きな機会だ」と話した。

 これまでたびたび撮影のために沖縄に訪れている原監督。「本土とは文化が違う沖縄には片思いのような思いがある」と打ち明け、「本土の人が作った映画をどう受け取ってもらえるか不安と期待がある。水俣を通して普遍的な環境問題として共感してもらえるはず」と語った。

 公開は27日まで、毎日午前10時50分から上映中。3部構成となっており、2度の休憩を挟む。軽食の持参も可能。

 (古川峻)

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