株価が大躍進したラーメン株、御三家に伸び代はまだあるのか?

この1年間で株価が大躍進したラーメン株。光熱費や人件費の高騰、原材料高、人手不足など悪材料満載の中、投資家のラーメン愛は、逆境を吹き飛ばしたようです。

ラーメン御三家、「一風堂」を展開する力の源ホールディングス(3561)、「ラーメン山岡家」の丸千代山岡家(3399)、「町田商店」のギフトホールディングス(9279)の直近1年間の株価騰落率を日経平均株価と比べてみると、ラーメン株の好調っぷりがはっきり分かります。

画像:TradingViewより


ラーメン御三家の売上高・営業利益を比較

ラーメンに関しては、人によって好みがはっきりと違い”ラーメンならなんでもいい”というファジーな人はあまりいないような気がします。それゆえ、こだわりにこだわった個人経営のラーメン屋さん(たいてい店主が無愛想)に行列ができたりといった事がよくありますが、逆に店舗拡大を行うチェーン店は、ほんとのラーメン好きから敬遠されそうな気もします。

わたしはそれほどラーメン通ではないため、ラーメン道を語れませんが、なぜこれほどラーメン株が上昇しているか、投資家として気になります。

それぞれの売上高と営業利益の、前期と今期予想を比べてみました。

3社とも今期は増収増益予想ですが、増収率・増益率とも前期からは鈍化しています。前期は、コロナ禍で大きな打撃を受けたあとからの急回復なので、増収増益率が異常に高くなっていることは差し引いたほうがよいでしょう。投資家も、ネガティブには受け取っていないようです。

3社の中では、ギフトHDの営業利益の伸びが30.5%といちばん大きいですが、株価は不思議といちばん冴えない展開です。同社は、2022年の1年間で見れば、3社の中でいちばん株価の上昇率が高かったこともあり、一服感があるのかもしれません。

直近1年でいちばん株価上昇率が高い力の源HDは、博多ラーメン「一風堂」が主力です。2023年3月時点のグループ店舗数は国内139店舗、海外134店舗と、ほぼほぼ国内と海外の店舗数が同数です。これがほか2社との大きな違いで、同社の成長ドライバーとなっています。イギリスで店舗がオープンされたときの様子をテレビで見ましたが、現地店員さんの指導など、かなり力を入れていました。

国内では1杯850円(税込)のラーメンが、ロンドンでは12.5ポンド(2,300円程度)で提供されていますが、海外店舗の既存店の売上推移を見ると、2023年1-7月で前年比114.1%と堅調。現地では普通に受け入れられる価格設定のようです。

山岡家、町田商店は?

力の源HDと首位争いをしている丸千代山岡家は、真逆の戦略を取っています。店舗は国内のみ、北海道・関東・東北・東海地区の主要幹線道路沿いに、豚骨ラーメン店「ラーメン山岡家」を出店。店舗数は2023年1月時点で176店舗となっています。すべての店舗が直営店で、基本的には24時間営業。メインの顧客は、トラックの運転手さんです。一部店舗では、シャワー室を設置して、運転による疲れをリフレッシュできるサービスも。こうなるとトラック運転手さん間の口コミで広がりそうですよね。

ラーメン山岡家の特長である濃厚スープは、創業者が直々に店長に伝授するこだわりよう。この味が作れない限り、店舗開店はしないため、店舗数が急増することは期待できませんが、しっかりとした太いファンがつきそうです。こちらも既存店の売上は好調で、今期2-7月の上期は前年比140.1%増となっています。

株価が出遅れているギフトHDは、横浜家系ラーメン「町田商店」を主体とした国内・海外直営店に加え、運営ノウハウや食材を提供するフランチャイズ店を運営。2023年4月時点で、直営店舗186、フランチャイズ店舗544ですが、2025年10月期には、国内1,000店舗体制を目標にしています。フランチャイズ展開なので、スピード拡大が期待できる一方で、飽きられてしまうリスクもチラつきます。

今期、2022年11月〜2023年7月までの既存店売上は117.5%と好調。店舗数は、1年間で25店舗増えています。ちなみに丸千代山岡家は、7店舗ですので、スピード感の違いが分かります。

3店舗の7月のみの既存店売上高は、力の源国内120.7%、力の源海外109.0%、丸千代山岡家126.0%、ギフトHD116.4%と、この暑さでもラーメン愛は堅調で、夏バテ気味のわたしからすると驚愕です。

すでに株価もかなり上昇しているラーメン株ですが、さらにここから上昇余地があるかどうかは、今後も既存店の売上高や客単価が低下しないことが大事な条件となります。

奇しくも円安で、外国人観光客から見ると、1,000円以下のラーメンはかなり安く感じるでしょう。味のクオリティは各社とも高レベルですし、日本食の代表としてラーメンが好んで食べられるのは容易に想像がつきます。

ラーメンが伸びるのは困りますが、株価はまだまだ伸びてほしいですね。

© 株式会社マネーフォワード