宝塚月組トップ月城かなとをイメージ 18日開幕の新作「フリューゲル」、冷戦下のドイツが舞台

宝塚歌劇月組公演ミュージカル「フリューゲル-君がくれた翼-」。主演の月城かなと(右)と海乃美月(C)宝塚歌劇団

 宝塚歌劇月組ミュージカル「フリューゲル-君がくれた翼-」が18日、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市栄町1)で開幕する。トップスター月城(つきしろ)かなとにとってトップ就任以来、初となる新作オリジナル。冷戦下、東西分断のドイツを舞台に、月城は西ベルリン生まれの東ドイツ国家人民軍広報官を演じる。歌劇団きっての演技派とされる月城をイメージして作・演出の齋藤吉正がアテ書きした。月城は「いただいた台本からどれだけイメージを膨らませられるか。難しいけれど、それが醍醐味(だいごみ)」と心境を語ってくれた。

 ヨナス(月城)は、コンサート出演のため西ベルリンから東ベルリンに来た歌手、ナディア(海乃美月=うみの・みつき)の警護を担当。自由奔放なナディアに振り回され、最初は反発するヨナスだが、次第にひかれ合っていく。ベルリンの壁が崩壊する前夜、1988年のドイツを舞台に、国家と自らの信念のはざまで揺れながらも、激動の時代を懸命に生きた人々を描く。

 「東西冷戦時代の人がどんな思いを抱いていたのか、ドキュメンタリー映像などを見て、想像をめぐらせている」と月城。その上で「ヨナスの人格がどのように形成されたのか考え、役に落とし込んでいる」。

 タイトルの「フリューゲル」はドイツ語で「翼」。「それが大きく飛んで自由になることの象徴だとしたら、舞台の幕が開いて自由になったと感じる自分に通じるのかも。稽古中、ずっと考えてきたことが『つながった』と思える瞬間」と語る月城。「もし実際に翼があったら?」の質問には「客席降りもできるようになったので、2階席に飛んで行けたらいいですね」と笑わせた。

 ショーの「万華鏡百景色(ばんかきょうひゃくげしき)」は、江戸から令和の東京までを舞台にしたレトロで華やかなレビュー。衣装や曲調の変化で時代の移り変わりを表現していく。

 幕開き、江戸の花火師にふんした月城は、海乃の花魁(おいらん)に恋をする。このあと、2人は生まれ変わりながら時代ごとに出会いと別れを重ねる。「もし生まれ変われるとしたら…いや、今の自分のまま、いろんな時代に行ってみたい。さしずめ、『フリューゲル』の舞台、88年のベルリンでしょうか」と真面目だ。

 来年110周年を迎える宝塚歌劇団。7月には現トップ5人が顔を合わせ、抱負を語った。「先輩たちがここまでつなげてくれたおかげ。次はわれわれが120年、130年と続けていかないと」とあらためて決意を語った。

 9月24日まで。10月14日~11月19日、東京宝塚劇場で。(片岡達美)

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