20代から定年まで、どんなプランで資産形成をしていくのが理想?

老若男女世代を超えて、マネーに関するお悩みで一番多いのが「老後資金の不安」です。そこで、今回は、将来に備えて、20代から定年となる60代まで、どのような考え方で資産形成をしていけば良いのか、各年代の資産形成のポイントを交えながら解説します。


人生にはお金を貯めやすい時期が3度ある

これから資産形成をしていくにあたり、押さえておきたいのが「お金の貯め時」です。就職して社会人になってから定年を迎えるまで、人生の大まかなライフイベントを俯瞰すると、比較的お金のかからない時期、つまり、お金を貯めやすい時期が3度あります。この時期にどのくらい貯められるか、どう貯めるかが、その後の資産形成に大きく影響します。

●お金の貯め時(1)就職から結婚まで
最初の貯め時は、就職してから結婚するまでの独身の期間です。就職したての頃は確かにまだ収入も少ないのですが、支出もまだ少ない時期です。特に、実家暮らしの人は家賃や食費などの負担も少なくて済みます。多少は家にお金を入れるとしても、残りはきちんと貯めておくと、後が楽になります。

●お金の貯め時(2)結婚から子どもが小学生の時期まで
次の貯め時は、結婚から子どもが小学生の時期までです。結婚して多少支出が増えても、夫婦ともに働いていれば収入は多くなるため支出増の影響はカバーできます。また、子どもが生まれても、小学生の時期までは教育費の負担も少ないため、比較的貯めやすいといえます。ただし、子どもを中学受験させるなどの事情があれば、お金も相応にかかりますので、貯め時は短くなります。

●お金の貯め時3子どもの大学卒業から退職まで
最後の貯め時は(1)(2)よりすこし先の時期、子どもが大学を卒業してから退職するまでです。子どもの教育費の負担がなくなり、その分を貯められるようになります。そこから定年までの間、老後資金作りのラストスパートができます。

逆に、子どもが高校・大学に進学する時期や定年退職後の時期は、お金の「使い時」といえます。使い時に資産形成が進まないのは仕方ないので、貯め時にきちんと資産形成ができるような仕組みを作っておくことが大切です。

お金は目的別に3つに分けて貯める

資産形成というと、全てのお金を投資商品で運用するというイメージがあるかもしれませんが、投資商品は、大きく増えるかもしれませんが、減る可能性もあります。ですから、やみくもに投資商品で運用するのではなく、まずは、お金を貯める目的に合わせて3つに分けることが大切です。

具体的には、お金を「日々出入りするお金」「3年~5年以内に使い道が決まっているお金」「10年以上先の将来のためのお金」に分け、それぞれ別の口座や金融商品、方法で貯めていきます。そうすることで効率よくお金を貯めていくことができます。

「日々出入りするお金」とは、もしもの場合に備えるお金や日常生活費です。生活費の6ヶ月~1年分は確保しておきましょう。できれば1年分あれば、急な病気やケガで働けなくなったり、リストラや転職などが起こったりしても慌てずに済みます。日々出入りするお金は出し入れしやすい普通預金口座で貯めておくとよいでしょう。

結婚資金やマイホームの頭金、留学費用など、3年~5年以内に使い道が決まっているお金は、普通預金よりも増やしたいところですが、いざ使うときに元本割れしていると大変です。比較的安全性が高い定期預金や個人向け国債などが適しています。

老後資金など10年以上使わない将来のためのお金は、使うまでに時間の余裕があるので、元本が割れる可能性はあるけれど、大きく増える可能性がある投資信託や国内外の株式などにチャレンジして、積極的に増やしていくと良いでしょう。その際、NISAやiDeCoといった、税制優遇のある制度を優先して利用しましょう。

このように、お金に色をつけると、目的に合わせて貯めやすくなります。

投資の基本は「長期」「積立」「分散」「低コスト」

今回は、老後資金など、10年以上先の使わないお金を貯めるための方法にフォーカスしてお話します。
10年以上先の使わないお金を貯めるには、投資商品を活用することがポイントですが、投資にはリスクがつきものなので、安定的にお金を増やすには投資の基本である「長期」「積立」「分散」「低コスト」を実践することが大切です。

●長期投資
長期投資は、数十年にわたる長い期間で投資を行うことです。短期投資では、一時的な値動きでお金を減らしてしまう可能性があります。しかし、長い期間で投資すれば、世界経済の成長とともに利益を得られる期待ができます。また、投資を長く続け、運用で得た利益や利息を再び投資すると、その利益や利息が新たな利益を生み出す「複利効果」が得られます。

●積立投資
積立投資は、定期的に一定額ずつ投資をすることです。投資先の商品の価格は上下に変動します。値動きのある金融商品を毎月一定額ずつ購入することで、商品の価格が安いときにはたくさん買い、高いときには少ししか買わなくなるため、「ドルコスト平均法」の効果が得られ、平均購入単価が自然と下がります。その後、少しの値上がりでも利益を出しやすくなります。

●分散投資
分散投資は、「値動きの異なる」資産に投資することです。こうすることで、ある商品が値下がりしても他の商品の値上がりでカバーすることができ、資産全体としての価格変動リスクを減らせます。たとえば、株式と債券は逆の値動きをするため、両方持っておけば、片方が値下がりしてももう片方が値上がりするため、大きな値下がりを減らせるというわけです。

●低コスト
投資にかかる手数料は安い方が有利。投資の成果は投資してみないとわかりませんが、投資にかかる手数料は安いものを自分で選べます。なるべく手数料の安い方法で投資することが、利益を最大化することにつながります。

長期、積立、分散、低コストを兼ね備え、かつ税制優遇の恩恵も受けられるのがNISAとiDeCoです。ですから、投資を行う時には、NISAとiDeCoの活用を優先させましょう。

年代別資産形成戦略のポイント

ここからは、年代別にNISAとiDeCoの活用ポイントを見ていきます。

●20代の資産形成のポイント
20代は、時間と複利を味方につけて、効率よくお金を増やしていける時期です。優先して活用したいのがつみたてNISA(新NISAのつみたて投資枠)です。運用益を非課税にしてお金を増やすことを目指します。節税効果はiDeCoのほうが大きいのですが、iDeCoの資金は60歳以降になるまで引き出せないという「資金ロック」があります。ですから、iDeCoを優先してしまうと、これから控える結婚、出産、子育て、住宅購入、余暇などの他のライフイベントにお金を使えなくなってしまうからです。

また、iDeCoでは毎月口座管理手数料がかかります。毎月の積立金額が少ないと積立金額に手数料が占める割合が増えてしまうため、NISAよりも投資の効率が悪くなってしまいます。ですから、つみたてNISA・新NISAのつみたて投資枠を活用しましょう。

20代の独身の場合は、お金の貯め時です。1年目は月5,000円、2~3年目は月1万円、4~7年目は月3万円、8年目以降は月5万円という具合に投資金額を少しずつ増やし、積極的に投資をしていきましょう。この場合、元本の総額は2,154万円です。年3%だと3,881万円、年5%だと6,055万円、年7%にいたっては9,812万円と、1億円近い金額に増加する見込みです。投資資金が少ないうちは少額のスタートでも、徐々に投資金額を増やすことで大きな金額に育つ期待ができます。

●30~40代の資産形成のポイント
30~40代の現役世代の資産形成のポイントも、基本的には20代と変わりません。30~40代も、まだまだ教育資金や住宅購入資金、余暇資金などにお金がかかる時期です。

とはいえ、結婚していて、子どもがいる場合、子どもが小さい時期は、お金の貯め時なので、積極的に資産形成を進めたいところです。

仮に毎月5万円を5%の利回りで30年間運用することができれば、約4,161万円になります。途中でライフイベントに必要な資金が発生した場合、2024年から始まる新NISAでは、資産の一部を売却して活用する方法が考えられます。新NISAは売却枠が復活するので、翌年から新たに非課税での投資が始められます。もしも新NISAのお金を使わなかったとしても、そのまま運用を続けることでやがて必要になる老後資金にも切り替えることができます。

毎月の掛金に余裕があったり、子どもを預けて共働きができたりするのであればiDeCoも併用しましょう。30代も後半あたりになると、給与もだんだん上がってくるでしょう。所得税の税率は所得が高くなると段階的に税率が上昇します。所得税率が上がると、iDeCoの節税効果も高まります。iDeCoで貯めたお金は60歳以降にならないと引き出せませんが、毎年節税できる金額も増やせることになります。これを貯蓄やNISAの投資資金に回すことで、お金が貯まりやすくなります。夫婦ともにiDeCoを利用すると節税の効果はさらに高まります。

50代の資産形成のポイント

一般的に50代は、これまでの人生の中で給与収入がもっとも高い時期。子育て世帯でも子育て関連支出がひと段落する頃です。ここから定年を迎える60歳・65歳までが「最後の貯めどき」と言えます。

人生が長くなっている今、資産形成期が70歳、寿命が90歳と考えれば、運用期間はまだまだ長く取れます。50代は、まだお金を増やす時期と考えます。

投資をする際は、新NISAとiDeCoをフル活用すると良いでしょう。仮に50歳のときに新NISAで月8万円、iDeCoで月2万円の計10万円を15年間積み立てた場合、65歳時点の元本総額は1,800万円になります。これを年5%で運用できれば、約2,673万円になる計算です。65歳時点で、新NISAでの投資額の合計は1,440万円ですので、生涯投資枠はまだ360万円余っています。65歳以降も働く場合は働いて得られた収入を原資に積み立てを続けても良いし、定年退職でもらった退職金を活用するのも良いでしょう。

30代・40代と同じく、夫婦であればそれぞれが非課税制度をフル活用することを徹底しましょう。生涯を通じて年収が高い時期であるということは、それだけ所得税率も高いので、iDeCoを活用するメリットがさらに上がります。

60代の資産形成のポイント

60代からでも、資産運用を始めるのに遅くはありません。新NISAは年齢による期限がないので、いつまでも非課税の運用ができます。定年後であっても、数十年にわたって時間をかけて運用しながら、少しずつ取り崩すことができます。

iDeCoは、厚生年金に加入して働いていれば、65歳未満まで加入できます。さらに今後は、iDeCoに70歳未満まで加入できるようにする動きもあります。

働いていれば、勤労収入により生活費をまかなうことができます。また、合わせてiDeCoの掛金を積み立てることができれば、その間所得控除の効果も得られます。

また、60代は退職金の使い道を検討する時期でもあります。退職金額は、年々減少していますが、それでもまとまった金額がもらえる可能性は高いでしょう。このお金を利用して、新NISAで運用することを考えましょう。とはいえ、60歳まで投資をしたことがない方や、預貯金が少ない方がいきなり全額を投資するのは危険です。たとえば退職金が2,000万円であればそのうちの1,000万円と、半分を預貯金や個人向け国債などの安全資産に割くとよいでしょう。

そして、残りの半分のお金を投資に回します。60代であっても、資産形成は十分にできますが、若年層と比べると時間が少ないのは事実です。ですから、「月に50万円投資・計20回」「月に100万円投資・計10回」など投資タイミングを複数回に分けて投資しましょう。一度にまとめて買うことで生じる元本割れのリスクを抑えることができます。

今回は、20代~60代までの資産形成のポイントについてお話しました。人生100年時代を見据えて、人生が充実するようにできることから準備していきましょう。

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