須須神社の倒壊鳥居、公費で撤去開始

公費での撤去が始まり、重機で取り除かれる須須神社の鳥居=珠洲市三崎町寺家

 珠洲市は17日、最大震度6強の揺れで倒壊した須須(すず)神社(同市三崎町寺家)の鳥居の撤去を開始した。被災した宗教施設の撤去を公費で賄う奥能登地震では初めてのケースで、国の補助金を活用し、災害廃棄物として処理する。神社は大きな揺れが襲った事実を風化させないため、破片の一部を敷地に残す方針だ。

 5月の奥能登地震では、珠洲市内の複数の神社で鳥居や灯籠が倒れるなどした。日本海を一望でき、奥州へ向かう源義経が笛を奉納したと伝わる須須神社も高さ約9メートルの鳥居が根元付近から崩れ落ちた。

 市は復旧を後押しするため、国の補助金を使って壊れた鳥居などの撤去を速やかに進めることを決定。環境省が費用の95.7%、残りを市が負担する形となる。

 17日はバラバラになった鳥居の破片が次々と重機でトラックに積み込まれ、同市蛸島町の仮置き場に運ばれた。18日は土台が解体・撤去される予定だ。

 市は引き続き、被災した宗教施設の中から、国の補助金で撤去が可能なものがあるかどうか検討する。補助金を活用するには「住民の生活環境の保全上、支障がある」と見なされることが条件となる。倒壊した鳥居などが通行の妨げになっているケースが該当するという。

  ●破片の一部を残す

 須須神社権禰宜(ごんねぎ)の多田千鶴さん(43)は鳥居の撤去が公費で賄われることに「氏子の中には被災した人も少なくなく、撤去で負担を強いることはできなかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。破片の一部を敷地に残し、震災の記憶を後世に伝えたい考えだ。

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