瑞泉寺の建築調査完了 国、県文化財指定へ一歩 寺と未来継承委が報告書

瑞泉寺の建築調査報告書の刊行を喜ぶ島田会長(左)と常本輪番=南砺市の瑞泉寺

  ●22日、南砺市に要望

 井波別院瑞泉寺(南砺市)と瑞泉寺未来継承推進委員会は17日までに、同寺の建造物の国、富山県文化財指定に向けて2011年から実施してきた調査を終えた。式台門など22棟4所の建築調査報告書を刊行した。21年に本堂、太子堂、山門に関する調査をまとめており、すべての建造物に関する報告書がそろった。22日に南砺市に要望書とともに提出し、文化財指定への協力を求める。

 瑞泉寺は江戸末期に建てられた山門1棟のみ県文化財に指定され、本堂など18棟と大楼壁(石垣の壁)1構は市文化財となっている。

 調査では、対象を細分化し、25棟と大楼壁4所について、それぞれの建築様式や年代などを調べた。

 調査の結果、式台門など8棟4所は江戸時代、本堂など11棟は明治時代、太子堂など3棟は大正時代、高岡門など3棟は昭和時代に建てられたことが分かった。

 寺未来継承推進委員会の島田勝由会長は、法要、儀礼を行う建物と寺の運営を担う建物が東西に配置され、これらを渡り廊下でつないでいる伽藍や、質の高い井波彫刻が随所にみられる点が寺の特徴であると強調し「近代和風建築としての文化財的価値は高い」と述べた。常本哲生輪番は「膨大な資料を調べ、長い年月をかけた。国や県の文化財になれば、市民の関心が高まる」と期待した。

 山本博之一級建築設計事務所(小松市)の山本博之代表、文化財建造物保存技術協会(東京)に所属した賀古唯義氏らが調査した。

 瑞泉寺は1390(明徳元)年に創建されて以来、火災が3回発生し、そのたびに再建されてきた。直近は1879(明治12)年に本堂や太子堂が焼失し、本堂は85年、太子堂は1918(大正7)年に再建された。

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