スマホ依存から脱却?若手記者が「なし生活」に挑戦 両手で見る地図に感動、テレカ買おうとすると…

公衆電話を使う橘高声記者。なんだか見られている気分…=姫路市内(撮影・辰巳直之)

 「なあ、スマホなかったらどうする?」。会社でもずっとスマートフォンを触っている私たちを見て、デスクがあきれたように言った。そして突然、私たちの「スマホなし生活」が始まった。期間は10日間。デジタルと距離を置く、今はやりのデジタルデトックス。愛するスマホ、さらば!(橘高 声、成 将希)

 私、橘高声(24)がスマホを持ったのは中学1年のとき。今は私用と会社用の2台を肌身離さず、常にメールや交流サイト(SNS)をチェックする。買い物はほとんどスマホ決済。実家に帰れば、母から「いいかげん置きなさい!」と本気で叱られる。

 もはやスマホは体の一部だ。考える前にインターネットで検索し、覚えようとする前に写真を撮る。正直、勝手に手が動く。寝る寸前まで画面を見ているので、当然、視力は悪い。寝不足にもなる。スマホを捨てれば、人として一皮むけるかもしれないな。

 スマホを手放すに当たって、ルールを決めた。【1】私用スマホは会社の机の中に封印する【2】社用スマホは電話の着信時のみ使用可【3】我慢できず使ってしまったときは素直に報告する-。パソコンやタブレットなどでもネットへの接続は厳禁。仕事のやり方も変わるし、日課のユーチューブはもちろん、LINE(ライン)もできなくなるのだ。

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 7月中旬。成将希記者(23)が、一足早くスマホなし生活に突入した。悲壮な顔で電源を落としていた。

 その数日後、いよいよ私の番。朝、重い足取りで会社に向かう。前夜、有名ユーチューバーの動画を3時間堪能し、家族や会社の電話番号を紙にメモした。

 同僚に見守られ、私用スマホの電源を切る。暗い画面を見て、気分も暗くなる。スマホがなくなっただけで、かばんがとても軽くなったような気がした。

 会社や取材先への連絡もしばらく公衆電話になる。まずはテレホンカードを買おう。どこで売っているか分からないが、スマホやパソコンで調べられないので、とりあえずコンビニへ。レジで恐る恐る「テレホンカードありますか」と尋ねると、「いやー、ないですね」と店員。2軒目にあったが、レジの若い店員は売り方を知らず、奥から店長らしき人が出てきた。

 次に書店で地図を買う。新聞を読むように両手を広げ、やっと姫路全域が見られる。普段、日本中の地図をあの小さなスマホの画面で見ていたのかと思うと、その便利さに感動した。

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 その夜。ふと気が付くと、スマホを探していた。少し怖くなった。スマホへの思いを断ち切りたい。そうだ、日常から離れよう。私、無人島に行ってきます!

【学んだこと】 ・テレホンカードを売っていないコンビニがある。 ・公衆電話は通話音量が小さい。 ・スマホを手放すと不安になる。

■橘高 声(入社2年目)

・ユーチューブを見ながら夕食を食べる。 ・行きたいお店の情報はインスタグラムでチェック。 ・私用スマホ内にあるアプリは104個。

■成 将希(入社1年目)

・休日に14時間の使用歴あり。 ・7割がユーチューブ視聴。動画が流れていないと寝付けない。 ・高校時代、母に金づちでスマホをたたき割られた。

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