中学生8人制作の山車完成 運行、はやし… 伝統継承やり遂げる 青森・むつ市大畑

自分たちで制作した山車を運行する根戸内さん(左)ら
点灯した山車の前で、同級生と輪踊りを楽しむ8人

 地域の伝統技術を守ろうと青森県むつ市大畑の中学3年生8人が制作していた山車が完成し、14日、正津川地区を練り歩いた。地域の人たちの力を借りながら、制作、運行、はやしと全てをやり遂げた8人。「自分たちが作ったヤマ(山車)を地域の人に見てもらい、伝統を受け継ぐことができたと感じている」と、胸を張った。山車は改良を加え、来年の地域の祭りでの運行を目指す。

 8人は、「大畑まつり」で山車を運行する団体「放生會(ほうじょうえ)」の山車を参考に、6月後半から制作を始めた。制作経験はほとんどなかったが、木材を組み立てて基礎を作り、「がく」と呼ばれる飾りや、放生會がご神体としている源頼朝を模した人形などを再現した。

 14日午後、制作拠点だったリーダー・根戸内豪(ねとない・たける)さんの自宅には8人のほか、運行に参加する同級生や家族らが集まったが、朝から降り続いていた強い雨はやむ気配がなかった。山車に雨よけのカバーをかけ、雨雲の動きを確認しながら運行開始のタイミングを見極めていると、雨は徐々に小降りに。「神様が自分たちのために晴れにしてくれたと思った」(根戸内さん)。予定より約1時間遅れで、山車が出陣した。

 そろいのはんてんを身にまとった8人。根戸内さんは扇子を手に先頭を歩き、山車を誘導。ほかの7人は、山車を引いたりはやしを演奏したりと、それぞれの役割を果たした。沿道では、はやしを聞いた地域の人が自宅から出てきて、「立派なヤマだね」「頑張ったね」と声をかけた。渡部せい子さん(75)は「みんなの笑顔が素晴らしくて、楽しんで作っていたというのが伝わる。大畑まつりの頼もしい後継者ができたね」と目を細めた。

 山車は、休憩を挟みながら正津川地区を回り、4時間ほどの運行を終えて正津川漁港に到着した。途中、水分を含んで膨らんだ木製のタイヤが擦れてギギギーと音を発し、ひやりとする場面もあったが、根戸内さんは「かなり心配だったけれど、最後まで持ちこたえてくれて良かった。100点満点のヤマを作れたと思う」と笑った。

 制作メンバーの張摩陽斗(はると)さんは「地域の人が完成を祝ってくれているように感じた。一番の夏の思い出ができた」と語った。正津川漁港で明かりをともした山車の前。一日の終わりを惜しむようにはやしを繰り返し演奏し、同級生や家族とともに輪踊りを楽しむ8人の姿があった。

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