【MLB】エンゼルス投手陣が球団上層部の姿勢に不満? 番記者がツイート

写真:エンゼルス投手陣は上層部に不満を持っているようだが

エンゼルスの投手陣は、球団上層部の投手に対するアプローチについて不満を持っているようだ。地元紙OCレジスターの番記者ジェフ・フレッチャー氏がX(旧Twitter)での投稿で明かした。

ことの発端は今季のエンゼルスのチーム防御率が大幅に悪化したことのようだ。今季のエンゼルスはチーム防御率が4.54(30球団中21位)と、昨年の3.79(同9位)から大幅に悪化。フレッチャー氏は現状の責任は投手コーチにあるのではないかという質問が多く寄せられているとした上で、投手陣はそう思っていないと投稿した。

フレッチャー氏の投稿によれば、今季に入ってエンゼルスのフロントは「制球力や状況に応じた投球よりも、ボールの回転数や球速、変化量を重視」するようになり、投手コーチアシスタントに野球専門のトレーニング施設「ドライブライン」出身者を配置するなど戦略の転換を進めていたという。これに対して何人かの選手が「四球が増加してしまう」「ストレートが少なく、変化球が多すぎるので相手に狙い球を絞られやすい」と反発しているというのだ。

さて、これらの発言を見て、フロントに問題があると決めつけるのは簡単だ。ここでは、実際の指標を見ることでエンゼルス投手陣の現状について少し考えてみよう。

まずは防御率だ。一般的には投手の能力をはかる指標として知られる防御率だが、実際に投手の能力だけを反映しているかと言われるとそうではない。そもそもヒットになるかどうかは野手に守備力や球場など、投手以外の環境が作用するからだ。防御率が悪くなるとつい投手陣に目を向けがちだが、ほかの要素(たとえば野手の移籍はなかったか)についても考える必要がある。

また、防御率は年度間で変動が大きい指標でもある。野球データサイト「Fangraphs」によれば、防御率の年度間相関は0.37しかない。同じ投手陣であっても、投手の能力以外の要因によって成績が変動してしまうことは大いにありうるのだ。少なくとも、チームの方針転換があったから防御率が悪くなったと決めつけることはやや早計だ。

次に、選手が問題視しているという「四球の増加」「ストレートが少なすぎる」という発言も見ていこう。今季のエンゼルス投手陣はBB%(四球/打者)が9.9%。昨季は8.9%と若干悪化しているが、極端に変化しているわけではない。さらに、ストレートの投球割合に至っては昨季が30.1%に対して今季は35.3%。個々の選手がどうかはともかく、チーム全体としてはストレートを増やしている傾向にすらあった。そもそも、エンゼルスは昨季から変化球の割合が多いチームだったようだ。

より詳しく、個別の投手を見れば明らかに悪化した部分もあるのかもしれないが、投稿から読み取れるようなチームの課題は実際には見られない。この問題の本質はもう少し違うところにありそうだ。

これはあくまで推測だが、この問題の最も重要な点は投手陣の多くがチームのプランを「上層部から降りてきたもの」だと認識していることかもしれない。フレッチャー氏の投稿を見る限り、エンゼルス投手陣とチーム上層部の考えにはズレが生じているように思われる。実際の成績如何よりも、選手が十分に方針を飲み込めていないことのほうが今後のチームに悪影響を及ぼす可能性は高いのではないだろうか。

野球に新たなデータなどを導入する上で最も重要な点の1つは、現場とデータ担当者および首脳陣による認識のすり合わせであることはこれまでにも様々な媒体で語られてきた。エンゼルスの上層部がそれを知らないとは思えない。フレッチャー氏の投稿内ではペリー・ミナシアンGMの「やってきたこと全てを評価する。毎年、新しいことを学んで改善をしていく」というコメントが紹介されているが、おそらくチームは今後この問題の解決に向けて取り組むだろう。

なんといってもエンゼルスの取り組みは今季始まったばかりとのこと。新しい取り組みに失敗はつきものだ。もう少し長いスパンでチームの戦略を注視する必要があるかもしれない。

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